2010 Fiscal Year Annual Research Report
中世前期における地頭支配の歴史的意義に関する総合的研究
Project/Area Number |
21720223
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 亮 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90451731)
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Keywords | 下地中分 / 地頭請所 / 鎌倉幕府 / 飢饉 / 地域的軍事権力 / 在地領主 |
Research Abstract |
今年度は、地頭請所・下地中分の事例を網羅的に集め、データベース化するため、鎌倉期・南北朝期の公家の日記で刊行されているものを集中的に検索し、新たな事例の収集に努めた。また、『南北朝遺文』(九州編・四国・九州編)を通覧し、地頭請所・下地中分事例の追加を進めた。 また、鎌倉幕府地頭制度形成を考察する前提となる、院政期・平氏政権期における武士の荘園権益形成や武士団結合のあり方について、九州・関東における事例研究を行い、それぞれ論文として発表した(詳細は2009年度研究実績報告書を参照されたい)。また、武蔵国南西部(多摩地域)の武士団の動向を鎌倉幕府と関連づけて論じ、多摩地域の有力武士団横山党・小山田氏(秩父一族)が、地域社会に影響力を持つ中小武士(西党)を従属させ、交通路掌握に基づく広域的勢力圏を前提にして、荘園形成に関与したことを明らかにした(2011年度に発表予定)。これらの事例研究から、鎌倉幕府成立以前の武士団≒在地領主の所領・権益は、荘園公領の枠組みを前提としない地域的な広がりを持っていた場合があること、それらの権益が、鎌倉幕府を媒介として荘園公領の地頭職に「変換」されることが明らかになった。これらの知見から、地頭請所・下地中分の事例分析に際しても、鎌倉幕府成立以前の状況を踏まえた長期的な事実関係の整理が不可欠であることを再認識した。
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Research Products
(7 results)