2011 Fiscal Year Annual Research Report
中世前期における地頭支配の歴史的意義に関する総合的研究
Project/Area Number |
21720223
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 亮 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90451731)
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Keywords | 下地中分 / 地頭請所 / 鎌倉幕府 / 飢饉 / 荘園領主 |
Research Abstract |
今年度は、現在活字化されている鎌倉・南北朝期の公家日記、『南北朝遺文』(九州編、中国・四国編、関東編<未完>)の通覧を終え、関係史料の追加をほぼ終了した。次年度に持ち越された課題は、(1)鎌倉・南北朝期の未刊行史料などでの事例検索、(2)学術雑誌に掲載された史料紹介の通覧、(3)自治体史の通覧による史料見落としの確認、などの作業を通じたデータの補完作業である。 また、地頭請所・下地中分の成立・展開を具体的に検討する素材として、下記の候補を選定した。すなわち、肥後国永吉荘(鎌倉幕府直轄領・地頭請所か)、薩摩国島津荘/伊作荘・日置北郷(摂関家領・下地中分)、安芸国三入荘(新熊野社領か・地頭職の中分)、丹波国和知荘(仁和寺領・下地中分)、越後国小泉荘(鎌倉幕府直轄領・地頭請所)、信濃国春近領(鎌倉幕府直轄領か、地頭請所)、陸奥国津軽(北条氏領・地頭代請所)である。 上記のフィールドは、九州・西国(畿内近国)・北陸・東国・奥羽それぞれの地域における地頭請所・下地中分のあり方を分析する上で豊富・重要な史料を有しており、これらの候補地について、時系列的な変化を追うため、地頭請所・下地中分前後も含めて関係史料・先行研究の収集を進めた。また、原本読解・熟覧の必要な史料については、所蔵者・保管者の許可を受けて調査を行った。 上記フィールドの多くは東国出身御家人の西国所領の事例である。したがって、荘園領主を同じくする別の荘園と比較検討することで「地頭請所・下地中分が行われる背景に荘園領主の志向がどのように働いていたのか」、という問題にもアプローチすることが可能と予想される。そこで検討対象としたのが、仁和寺領肥前国彼杵荘である。このフィールドについては、これまで私も研究を発表してきたが、本研究課題に即して再検討を加えるため、あらためて史料収集を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
去年度、個別検討対象とした地域が被災したため、年度末に個別検討対象を設定し直す必要が生じた。したがって、課題に即した史料収集はおおむね順調であるが、個別検討対象に調整を加えたため、それらの関係史料、先行研究の収集・分析をさらに進める余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さきに記したとおり、個別検討対象の候補地としたフィールドの関係史料・論文を、じっくり読み込み、分析することを最優先課題とする。同時に、鎌倉幕府の地頭請所・下地中分関連法令を分析し、個別検討対象における地頭請所・下地中分の展開と鎌倉幕府法との関連(あるいは乖離)を確かめていきたい。さらに、下地中分・地頭請所が行われる現地の状況を把握するモデルケースを定め、現地調査を行いたい。現在、候補として考えているのは、安芸国三入荘(地頭職の中分)、丹波国和知荘(下地中分)、信濃国春近領(地頭請所)である。
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Research Products
(3 results)