2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア海域世界における南蛮貿易の構造と関係都市社会の発展
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21720224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 美穂子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (30361653)
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Keywords | 南蛮貿易 / 長崎 / マカオ / ポルトガル商人 / キリシタン / カクレキリシタン / アユタヤ |
Research Abstract |
本年度は、以下の二点を中心とした研究をおこなった。 1.港市長崎の黎明期の社会 本研究に関しては、国際シンポジウムにて英語で報告(1件)と国内シンポジウム等での報告(3件>をおこない、広く内容をアピールした。その内容は大別して長崎黎明期の商人社会を明らかにしたものと、16世紀末から17世紀にかけての長崎市中と隣接する外海地方でのキリスト教布教とその後の潜伏キリシタンの風習との相関を明らかにしたものである。長崎黎明期の商人社会は、いまだその構成員等、十分に明らかにされていないが、貿易投資に関わる証文等にあらわれる血縁・取引関係等による商人たちの繋がりを手がかりに、彼らが外国人相手の取引でいかなるグループと分業体制を形成していたかが判明した。17世紀初頭の長崎とその周辺の布教地域では、イエズス会が布教の中心を担っていたという認識が従来強いが、現在カクレキリシタンに見られる習俗や彼らの信仰対象の痕跡には、徳川幕府による禁教以後、これらの地域ではフランシスコ修道会の影響が強くみられることを指摘した。 2.日本との貿易断絶後のマカオ社会 本研究に関しては、国際シンポジウム報告(1件)と国内研究会報告(1件)をおこない、マカオ関係の新出ポルトガル語史料の分析を中心に、学界に広く新しい情報提供をおこなった。これらの情報分析からは、日本との貿易断絶後のポルトガル系マカオ社会が広東の華人商人集団との協力・競合関係にあり、主に東南アジア交易で、貿易勢力のひとつと化したことを明らかにした。その事例として17世紀後半から18世紀前半にかけての港市アユタヤにおけるポルトガル人商人たちの活動をとりあげ、様々な新事実を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、海外史料調査および学会報告はおこなわず(妊娠のため)、国内での史料調査・研究報告にとどまるに至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中間成果は昨年刊行した単著『商人と宣教師-南蛮貿易の世界』(東京大学出版会)にまとめられている。以後の研究では、南蛮貿易により開発された都市長崎の黎明期と、そこに居住した日本人と外国人の多国籍社会とその社会が抱えた様々な問題について焦点をあてる。研究成果は2012年度刊行予定の単著『末次平蔵』(ミネルヴァ書房)、2013年度刊行予定の『南蛮貿易』(講談社選書)で公開される予定である。
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