2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世朝廷社会における政務運営システムと公事情報の伝達
Project/Area Number |
21720225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 珠紀 東京大学, 史料編纂所, 助教 (10431800)
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Keywords | 日本中世 / 古記録 / 政務運営システム / 朝廷 / 公事情報 / 官司制度 |
Research Abstract |
本研究課題は、中世の朝廷社会で実務を担った中下級貴族の活動・役割、その中世を通した変遷から、朝廷全体の政務運営システムについてまとめることを志すものである。本年度は朝廷社会を支える下級実務官人層の官司運営システムの変遷と、朝廷経済の変化を検討した。その成果は歴史学研究会大会において「中世朝廷の運営構造と経済」として報告した。また中世に多数流布した官職故実書である『職原抄』の検討を行い、その伝来すなわち公事情報の共有状況をまとめた(「『職原抄』の伝来について」)。さらに穴山信君と策彦周良の関係から京都と中国、甲斐をまたぐ文化交流の様相をたどった。 また中世の貴族たちの手になる日記(古記録)は数多く伝来しているが、まだその検討、蒐集、紹介は充分とはいいがたい研究状況にある。そこで研究の基礎となる諸古記録および関連文書の収集、分析も進めている。そのため宮内庁書陵部、国立歴史民俗博物館、京都府立総合資料館、天理大学附属天理図書館を始めとする諸機関、各地の文書所蔵者の許に調査に伺い、マイクロカメラによる写真撮影や紙焼の購入を行った。蒐集した史料は、史料的性格を検討し、翻刻を進めている。その中で本年度は鎌倉期の藤原経光の「『頼資卿熊野詣記』『後鳥羽院修明門院熊野御幸記』『修明門院熊野御幸記』紙背文書の紹介」、室町期の広橋綱光の「綱光公暦記享徳三年記」の紹介を行った。これらはいずれも鎌倉・室町期の朝廷の実務を担った中級貴族の日記であり、当該期の研究を行う上で重要である。またそれぞれの料紙や紙背文書の検討も併せて行った。
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