2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世朝廷社会における政務運営システムと公事情報の伝達
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21720225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 珠紀 東京大学, 史料編纂所, 助教 (10431800)
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Keywords | 日本中世 / 古記録 / 政務運営システム / 朝廷 / 公事情報 / 官司制度 |
Research Abstract |
本研究課題は、中世の朝廷社会で実務を担った中下級貴族の活動・役割、その中世を通した変遷から、朝廷全体の政務運営システムについてまとめることを志すものである。本年度は鎌倉期を中心に、室町期までを見通す形で朝廷社会を支える下級実務官人層の官司運営システムの変遷と、朝廷経済の変化を検討した。その成果は単著『中世朝廷の官司制度』として刊行した。検討の対象としたのは、外記・史などの実務官人、陰陽道などの技能官人などである。「織田信長子息と武田信玄息女の婚姻」では陰陽道土御門家の記録を検討する中で、その紙背文書から、当該期の政治状況を探った。下級官人たちの役割の重要性が窺える。 また中世の貴族たちの手になる日記(古記録)は数多く伝来しているが、まだその検討、蒐集、紹介は充分とはいいがたい研究状況にある。そこで研究の基礎となる諸古記録および関連文書の収集、分析も進めている。そのため宮内庁書陵部、国立歴史民俗博物館、京都府立総合資料館、天理大学附属天理図書館を始めとする諸機関、各地の文書所蔵者の許に調査に伺い、マイクロカメラによる写真撮影や紙焼の購入を行った。蒐集した史料は、史料的性格を検討し、翻刻を進めている。その中で本年度は室町期の広橋綱光の「綱光公暦記 寛正三年記」、織豊期の吉田兼見の「『兼見卿記』自元亀元年至同四年記紙背文書」の紹介を行った。これらはいずれも当該期の武家との関わりも強い中級貴族の日記であり、当該期の研究を行う上で重要であるが、従来利用されてこなかった史料である。またそれぞれの料紙や紙背文書の検討も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、中下級貴族の史料収集、読み込みを進め、朝廷の政務運営システムの在り方を探っている。平成23年度には単著『中世朝廷の官司制度』として、中間的ではあるが成果を一つの形にまとめた。また広橋家・吉田家などの中級貴族を中心に、蒐集した中で従来充分に利用されてこなかった古記録類の翻刻・紹介を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も史料の収集・読み込みを進めていく。本年度は特に記録類の中でも、特定の内容に特化した「部類記」や様々なテーマに沿って記録類をまとめなおした故実書(『局中宝』など)に注目する。そこから読み取れる政治情勢や、公事情報の流れを明らかにしていく予定である。
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