2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720231
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
人見 佐知子 甲南大学, 人間科学研究所, 博士研究員 (00457029)
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Keywords | 日本史 / 近代史 / ジェンダー / 買売春 / 遊廓 / 公娼制度 / 都市史 / 女性史 |
Research Abstract |
本年度は、まず、(1)日本の公娼制度について近世・近代の歴史的特徴を理解するための理論的考察の一端を、ジェンダー史学会で報告した(公娼制度の時代的特質から「遊廓」の訳語を考える)。また、近代公娼制度についての最新の研究成果である小野沢あかね著『近代日本社会と公娼制度-民衆史と国際関係史の視点から-』についての書評を著し、近代公娼制度研究史の現状を整理するとともに課題を提示した。 (2)公娼制度の具体的ありようを明らかにするため、前年度にひきつづき金沢をフィールドに地域の政治・経済・文化的背景を踏まえた「遊廓社会」の構造分析を行った。その成果の一部は、遊廓社会研究会(於:東京大学)で報告し、現在来年度刊行の『遊廓社会論集』(仮)に向けて原稿化の作業を行っている。 (3)近世と近代の公娼制度の歴史的特質に大きく関係する明治5年の太政官布告第295号(「芸娼妓解放令」)の歴史的意義について、これまでの研究成果を総合し地域史の観点から上記の課題に迫った「公娼制度の成立・展開と廃娼運動-日本近世~近代へ」(共著、『ジェンダー史叢書1権力と身体』明石書店、2011年1月)を得た。引き続いて、明治維新期の一連の政策のなかに「芸娼妓解放令」を位置づけるために、東京都公文書館で芸娼妓解放令関係の史料収集を行うとともに、同史料の翻刻作業を進めている。これは、公娼制度の歴史的変容を解明し、日本近代都市史研究を媒介として買売春のありようを規定する近代日本社会の歴史的特質を理解する本研究の要諦となるはずである。
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