2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21720233
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 准士 島根大学, 法文学部, 准教授 (80294354)
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Keywords | 讃岐国 / 神祇礼拝 / 異端 |
Research Abstract |
島根県飯石郡飯南町の明眼寺文書の整理を継続的に進めた。これにより、文書群のおよそ四分の三の内容を整理し把握することができた。これらの史料の内容については、次年度の調査研究に利用する予定である。 また、本願寺史料研究所、香川県立文書館などで史料調査を行い、讃岐国における了空と教乗という浄土真宗僧侶の論争(18世紀後半)に関する史料を収集した。そのうえで、これらの分析の結果を、「神祇礼拝論争と近世真宗の異端性」という論文に発表した。 この論文で明らかにした内容は以下の通りである。すなわち、近世真宗においては、阿弥陀如来以外への仏神へ帰依することは教義上認められなかったが、そのことを現世において行動として表出することについては、諸教・諸宗派の分立を容認するという前提があったために制約があった。こうした制約を前提に、神祇礼拝を容認する教義を説く僧侶と、それを必要最小限に留めるべきとする僧侶とが出現し、互いに論争するにいたった。 また、こうした僧侶間の論争が地域における弟子僧や門徒までを巻き込んだ紛争に発展する背景には、講の結成など、一般門徒による活発な信仰に関わる活動があったことを指摘した。このような一般門徒による活動を条件として異安心(異端信仰)も発生したが、真宗僧侶たちは教学を構築するにあたり、異安心を統御しようとしてかえって様々な説を立て論争に及ぶにいたった。しかも、講における法話には贔屓の僧侶が呼ばれたために、こうした僧侶たちの対立は一般門徒まで巻き込んだものになったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明眼寺文書の整理が進展したとともに、神祇礼拝をめぐる僧侶間の論争について論文を発表したため。奥飯石をフィールドにした紛争の分析については、成果の発表ができなかったが、次年度まとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるので、引き続き、関連する史料の整理と撮影等に努めるとともに、収集した史料の分析を進め、論文として成果を公表することをめざす。
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Research Products
(1 results)