2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦時・戦後日本社会の医療問題に関する政治・社会史的研究
Project/Area Number |
21720234
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鬼嶋 淳 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (60409612)
|
Keywords | 日本史 / 地域史 / 医療運動 / 保健衛生 / 生活学校 / 新生活運動 |
Research Abstract |
本年度は、第1に、大島慶一郎関係資料の調査・整理を進め、仮目録を作成した。大島は、戦後初期から、埼玉県の農村地域での診療活動、全国的な医療運動に取り組みながら、村会議員、県会議員として地域政治にも力をいれた農村医師である。医師、診療所、医療運動に関するまとまった史料群は、戦後医療運動史研究にとどまらず、医療・福祉・「生活」問題といった視点から戦後日本の地域社会の変容過程を明らかにできる内容を含んでいる。今後、本格的に検討するための準備が整った。 第2に、1960年代半ば~70年代に、主に主婦を主体として取り組まれた生活学校運動について検討した。地域ごとに50~100人程度で1つの学校を構成した主婦たちは、生活のなかから地域社会の課題(たとえば、食品の安全や地域医療体制など)をとりあげて、自ら学習し問題を明確にしたうえで、行政や業者といった異なる機能集団と「異質の対話」を行い、その後、「事後処理」といわれた実践活動を通じて問題の解決をはかった。新生活運動協会が主導して始まった生活学校であったが、70年代になると、各地の生活学校が主導して全国大会を開催することとなった。「生活」問題に注目して、高度成長期における新生活運動協会の動向と女性の主体化のあり方を検証した(鬼嶋淳「生活学校運動」大門正克編『新生活運動と日本の戦後』日本経済評論社、2012年刊行予定)。 第3に、戦時~戦後にかけての保健衛生・医療・「生活」問題について検討するため、島根県を対象にして史料調査を行った。西日本では島根地域が、保健婦養成所を戦時の早い段階で開設し、保健衛生問題に取り組んでいる。さらに高度成長期には「過疎」問題に直面するなど、保健衛生・医療・「生活」問題が焦点化した地域である。具体的には、戦時期の保健婦養成所に関する調査、戦後初期の保健婦への聞き取り調査、病院関係の調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本史料と位置づけている大島慶一郎関係資料が、計画したときの想定を上回る分量であったため、その整理に時間を費やした。そのため、史料内容の分析まで進んでおらず、やや達成度に遅れがでている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることから、これまで史料の収集・分析を重ねてきた事例について研究成果を公表する。また、調査・整理・目録化作業を進めてきた「大島慶一郎関係資料」の本格的な分析に取りかかり、1950年代の医療運動について検証を進める。事例研究を積み重ね、基本資料の発掘・調査・整理作業を終えることに集中する。
|