2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720235
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
武井 弘一 琉球大学, 法文学部, 准教授 (60533198)
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Keywords | 日本史 / 近世史 / 生態系 / 自然環境 / 「農業図絵」 / 近世型生態系 |
Research Abstract |
近世中期に金沢平野の篤農家・土屋又三郎は、絵農書「農業図絵」を描き、農書「耕稼春秋」を執筆した。本研究では、「耕稼春秋」を用いながら「農業図絵」に描かれている場面を分析し、水田を中心にした近世の自然環境を明らかにした。生き物の捕食-被食関係から生態系を復原した結果、近世の自然環境を理解する手立てとして、近世型生態系という、新たな概念を提唱するに至った。研究は、以下に示した2つの方法でおこなった。 1史料調査・分析 「農業図絵」の舞台となった金沢平野を支配していた加賀藩の理解を深めるため、同藩の史料を所蔵している金沢市立玉川図書館近世史料館の史料調査・分析をこれまでの2年間おこなってきた。本年度は、それらの史料を最終確認するために同館を訪れ、史料の校訂作業をおこなった。また、「農業図絵」そのものの史料確認をするために、西尾市岩瀬文庫を調査した。 2研究報告・論文執筆 史料分析・校訂作業と同時進行で、研究成果をまとめていった。岡山と東京の2か所でおこなわれた環境史の研究者による合同研究会では、研究成果の中間報告をおこなった。具体的なタイトルは、「開発と臨界」(岡山)と「新田開発」(東京)である。研究の内容については、生態系を復原した結果、近世の新田開発によって水田と草山が造成され、ヒト(武士)-タカとヒト(百姓)-ウマ・ウシを軸にした自然環境が成り立っていたこと、すなわち近世型生態系が形成されたという結論を導き出した。最終的な成果は論文と著書(共著)で公表するが、後者は編集作業に時間を要することから、公表できるのは次年度以降と予想される。
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