2011 Fiscal Year Annual Research Report
室町~江戸初期における朝廷・天皇・公家衆の発給文書と政治的動向
Project/Area Number |
21720238
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
水野 智之 中部大学, 人文学部, 准教授 (00468240)
|
Keywords | 室町時代 / 公武政権 / 王権 / 朝廷 / 長野氏 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、史料の調査・研究を継続し、天皇・朝廷・公家衆の発給文書を蒐集・整理をした。刊本史料の調査がやや遅れているので、さらに進める必要がある。 本年度の研究成果として、第一は「応永期の公武政権と「王権」」である。学会で報告をしたが、まだ学術雑誌には公表されていない。2012年5月に公表される予定である。内容は足利義満期の公武政権に関する諸研究を整理し課題を明確にしたこと、足利義持期の公武政権の再検討から近年の室町殿論に対する私見を述べたものである。結論としては応永期の公武政権については義満・義持の限界面に配慮した研究が増えており、これは天皇自身が保持する権限の解明と表裏をなしていることを説いた。加えて、天皇は「礼」という身分秩序を手段の一つとして存続し、法や国家権力に関与する可能性を常に再生産していたため、天皇の権威・権力は注意して検討する必要があること、そして当該期の王権論はこの点を分析する必要があることを説いた。 第二は同じくまだ学術雑誌に公表されていないが「伊勢長野氏家譜類にみる中世文書」である。次年度に公表する予定である。内容は長野氏の所蔵する『伊勢長野氏家譜』など長野氏関係の記録に収載されている中世文書の写を紹介するものである。長野氏は伊勢国を本拠とする室町幕府の奉公衆であり、織田信長の伊勢国侵攻後に滅亡したとみられていたが、このたびの研究により近世まで生き残った経緯を示すことができた。ここには従来知られていない文書が含まれており、学術的にも貴重である。この史料の一部には明応元年二月一日、後土御門天皇が智永寺に額面を下したが、その額面は天正六年に焼失するといった、天皇・朝廷の事績も記されている。伊勢国の国人長野氏の動向を伝えるだけではなく、天皇の事績や朝廷の発給文書を探る上でも価値のある史料である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究がやや遅れている理由としては、所属する研究機関が変わったため、新たな講義の準備など、新研究機関での校務を遂行する準備に別途時間を要したからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は所属する研究機関の変更ということはなくなるので、研究の遅れをもたらす要因は解消される見通しである。現状では研究がやや遅れているので、その遅れを取り戻すよう次年度は研究時間をこれまで以上に増やす必要がある。
|