2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世アラブにおけるイスラーム寄進制度(ワクフ)の社会的機能
Project/Area Number |
21720253
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 大介 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特任研究員 (20508907)
|
Keywords | 東洋史 / 西アジア / イスラーム / 寄進 / 慈善 / マムルーク朝 / エジプト / 中世 |
Research Abstract |
寄進者個人にとってワクフ寄進がどのような意義を持っていたか考察するため、15世紀後半のマムルーク朝アミール(軍団長)・キジュマースのワクフ文書を用いた事例研究を進めた。文書史料から寄進物件の入手と実際の寄進の日付、物件入手先とその手段、物件の種類、寄進対象、管財人その他の規定内容といった具体的な情報をピックアップし整理した。平行して、同時代の年代記や人名録といった叙述史料を精査し、彼のライフ・ヒストリーを再構成するとともに、それをワクフ文書の情報と重ね合わせ検討した。それを通じて、彼がライフ・コースのいかなる段階でいかなる背景のもと何を望んでワクフ寄進を行うという選択をしたのかを多角的に考察した。以上の成果は、現在論文として執筆中である。また、上記の研究を遂行するため、9月にエジプト・国立公文書館とワクフ省文書局を訪問し、文書調査を行った。また11月には英国Bodleian Library他を訪問し、関連資料の調査・収集を行った。また、ワクフが単なる「慈善行為」ではなく、寄進者にとって財産保有手段として積極的に利用されていたことに注目し、『東洋学報』誌に論文「財産保有形態としてのワクフ」を発表した。また、中央大学人文科学研究所(編)『アフロ・ユーラシア大陸の都市と宗教』に、マムルーク朝時代のワクフ文書の様式とそこから読み取れる特徴をまとめ、事例研究としてスルターン・シャイフのワクフ文書を取り上げた論考「中世エジプトの寄進文書」を執筆・発表した。
|
Research Products
(3 results)