2010 Fiscal Year Annual Research Report
唐五代期における実用典籍の読者層の研究ー中国西北出土古文献を中心に
Project/Area Number |
21720257
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岩本 篤志 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (80324002)
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Keywords | 敦煌文献 / 敦煌秘笈 / 具注暦日 / 陰陽術数 |
Research Abstract |
当該年度は前年度につづいて武田科学振興財団・杏雨書屋が所蔵する敦煌文献「敦煌秘笈」について、欧州や中国に所蔵される敦煌文献との関係性に重点をおいて調査した。とくに杏雨書屋蔵史料群の性格については、その見通しを「杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」概観」に示した。また内陸アジア出土古文献研究会(6月)および唐代史研究会(8月)にて杏雨書屋所蔵敦煌秘笈のうちの一点「雑字一本」について研究発表をおこなったほか、同じく敦煌秘笈の一点である「百惟図(百怪図)」について京都大学人文科学研究所・西陲發現中國中世寫本研究班(6月)と復旦大学歴史系主催の国際研討会(11月)にて発表をおこなった。さらに京都大学人文科学研究所・術数学研究会(1月)にて「敦煌秘笈の具注暦日について」と題する発表をおこなった。京大人文研での発表は所謂学会発表ではないが、複数の外部機関の研究者からひろく意見や批判をいただくことができた。 これらの成果に共通する意義として以下の3点をあげることができる。 まず、未知の敦煌文献の資料群である敦煌秘笈がどのような経緯で構成されたのかということについて一定の見解をしめすことができた。次に個々の資料が既知の欧州・中国所蔵の敦煌文献とどのような関係にあるのかということについて、その一端をあきらかにした。最後に紀年や書写者名、または印記等のない文献について、書写者と書写年代を推測する手法をほぼ確立し、敦煌文献をとおしてその社会の未知の実態をあきらかにできた。 以上のように当該年度の成果は「実用典籍の読者層」に迫ろうとした本研究の目的に合致したものとして一定の成果に達した。 また当該年度末にはロシア・サンクトペテルブルグ東洋学研究所で敦煌文献の調査をおこなっており、その調査をふまえた成果を準備中である。
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Research Products
(6 results)