2010 Fiscal Year Annual Research Report
英国東インド会社トンキン商館文書を用いた近世ベトナム史の新研究
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21720261
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蓮田 隆志 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (20512247)
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Keywords | ベトナム / イギリス東インド会社 / 近世 |
Research Abstract |
本年度に於いては、当初計画では昨年度に同じく大英図書館(British library)にて史料調査を行う予定であったが中止した。その理由は、当該史料の整理を担当していたA.Farrington氏の遺稿を偶然入手したため、これと昨年度の調査結果とを併せて分析に集中する方が2年間という科研の期間を考えた場合、より有効に時間と資金とを利用できると判断したからである。 これらの史料の分析により、以下のことが新たに判明した: (1)イギリス東インド会社のトンキン駐在に於いては、特に初期にはポルトガル語を話せる人材が大きな役割を果たした。これは既に一部で指摘されていた、ポルトガル語が南シナ海世界における共通語としての役割・重要性は、インドシナ半島東岸においてもしかも非カトリックの西洋人が関わる場合においても確認されることを意味している。今後は布教史や直接ポルトガルが関わったマカオやマラッカ、日本貿易など以外の場面においてもポルトガル語を用いた既往研究を参照する必要があるだろう。 (2)フォーヒエンには毎年多数のシャム船(船長の民族的属性ははっきりしないことが多い)が入港し、盛んに取引を行っている。また、船長にはフォーヒエンに現地妻を持つ者もいるなど、広く海域アジア全般で見いだされる貿易港の特徴が当てはまる。さらに、シャム船は当地でイギリス東インド会社とも貿易を行い、金銭貸借などをめぐって紛争も発生している。現地の地方官署・現地有力者は要請に応じてトラブル解決に動くものの、基本的に積極的な介入を好まなかった。
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Research Products
(2 results)