2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720262
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
藤田 英里 広島市立大学, 国際学部, 研究員 (70516012)
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Keywords | インドネシア史 / 民衆運動 / 地域社会 / ジャワ / バンテン / ランプン / 移民 / 出稼ぎ |
Research Abstract |
平成22年度に実施した研究の成果は、まず西ジャワ・バンテン地域から南スマトラ・ランプン地域への出稼ぎの実態について検討したことである。これまでバンテンは貧しい地域と言われてきたが、毎年多くの者が莫大な費用のかかるメッカ巡礼に出かけられた地域でもある。この理由をバンテンにおける社会経済構造から検討し、米やココ椰子の商品化と、首都バタヴィアやランプンへの出稼ぎ労働により多額の現金収入が得られたことを解明した。そしてシンガポールのリヴァープールホテルで2010年6月に開催されたアジア史研究者協会(IAHA第21回大会において、Indonesia:Administering an archipelago in the 20th Centuryというテーマでオランダ人、インド人、インドネシア人の若手研究者と共にセッションを組んでパネル・ディスカッションを行い、ランプンにおける移住政策の概要と、それが現地社会に与えた影響について説明した。 またランプンにおける村落共同体マルガがオランダ植民地政庁の介入によってどのように解体・再編されたのかを、オランダの国立総文書館やオランダ国立民族研究所(KITLV)、インドネシアの国立文書館等で集めてきた一次史料を元に検討した。そして、一度はオランダの介入で消滅したと言われたマルガが、20世紀初頭から慣習法学者の台頭により再評価され、その際に新たに設定されたマルガ領域及びその首長が現在のランプンのデサ(村)及び村長の起源となっていることを解明し、こうした一連の政策によって地域社会側からどのような抵抗運動が生じたのかをも明らかにした。これらの成果の一部を、京都大学で2010年7月に開催された東南アジア学会関西例会や、10月に広島大学で開催された広島史学研究大会東洋史部会で報告した他、論文として発表する準備を進めている。これは交付申請書に記載した本研究の目的である、農村の階層構造や農業生産力と民衆運動を関連づけて考察するという作業の一環として位置づけられる。
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