両大戦間期イギリスにおける経済政策-構造改革とグローバル化戦略-

2009 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21720278
• Research Institution: Aoyama Gakuin Women's Junior College
• Principal Investigator: 秋富 創 Aoyama Gakuin Women's Junior College, 教養学科, 講師 (00407909)
• Keywords: 経済史 / 経済政策 / 西洋史

Research Abstract

本年度における本研究では、1920年代のイギリス経済政策を、特に物価および価格の側面から考察することに焦点を当てるために、イギリスの公文書館において入手したイギリス大蔵省文書(Treasury Papers)の検討、分析を行った。既存の研究においては、1920年代の経済政策を考察する際、1925年の金本位制再建という通貨問題が大きく取り上げられ、当時ケインズが論争を展開したように、政府のこの政策決定がイギリス経済に対してどのような影響を与えたのか、という点が注目されてきたように思われる。本研究では、金本位制が有する経済的影響力もさることながら、主として、その政策決定に付随した「デフレーション」の実態を解明することに力を注いだ。当時の世論は、金本位制の再建にともなうデフレーションという経済現象をいったいどのように認識していたのか。いわゆる新古典派的な経済観が支配的な風潮においては、そもそもデフレーションという存在は現代の日本の文脈において語られるように、「経済的な悪」として認識されていたのであろうか。政府の人間、特に大蔵省の官僚や、内閣の一員である閣僚はデフレーションをどのように認識し、それに対してどのような政策を遂行しようとしていたのか。このような問題意識の下、公文書館においては大蔵省が独自に保管していた当時の新聞、雑誌記事、大蔵省の高級官僚や政治家個人の意見が表明されているペーパー、物価に関する統計データなど、様々な1次史料を閲覧することができた。現在のところ、このように集めた史料を整理し、「構造改革」という本研究独自な視点から分析を行い、1920年代のイギリス経済政策の実態に深く迫ることを目指している。