2011 Fiscal Year Annual Research Report
北東アジアにおける押圧細石刃剥離方法の出現と展開に関する比較研究
Project/Area Number |
21720280
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 純 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教 (30344534)
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Keywords | 考古学 / 石器 / 北東アジア / 細石刃 / 押圧剥離法 / 旧石器時代 |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、北東アジアにおける押圧細石刃剥離方法の出現と展開の具体相を明らかにすることにある。具体的には、北東アジアにひろく分布する細石刃石器群を対象に、押圧細石刃剥離方法がいつ頃、どの地域で、どのような背景から出現したのか、その後、それはどのようなプロセスで拡散していったのかを解明することを目標としている。本年度は、モンゴルおよび中国、日本において資料調査を実施し、また北東アジア地域における調査データの網羅的収集とデータベース化を進めた。その結果、以下の成果が得られた。第一に、日本列島で最も古い年代を示す細石刃石器群である北海道の蘭越型細石刃核を伴う石器群に関して、フラクチャー・ウィングの分析にもとづいた剥離方法の同定分析をおこなった。その結果、細石刃剥離は押圧剥離方法によっていたことが確認できた。北海道では出現段階の細石刃石器群においてすでに押圧剥離法の適用がなされていることが明らかとなった。また、その後に展開することになる細石刃石器群においても、細石刃剥離は基本的に押圧剥離方法によっていたことが把握できた。本研究により、押圧剥離方法と細石刃剥離との結びつきを客観的な方法にもとづいて体系的に示すことができた。第二に、北東アジア地域の細石刃石器群の出現段階の年代と技術的様相を精査した結果、北東アジアの複数の地域においてLGMの段階に出現していることが明らかとなった。しかも、それらの石器群には一定の技術的な多様性が認められることも確認できた。これらのことは、北東アジア地域における細石刃石器群の多元的な出現過程を示唆することになろう。
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