2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720292
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
高田 貫太 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (60379815)
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Keywords | 造瓦 / 日朝交渉 / 新羅と日本 / 同笵関係 / 古代寺院 |
Research Abstract |
研究の最終年度にあたり、これまで集成してきた日本列島で確認された、渡来系寺院の軒瓦(創建段階を中心に)資料、ならびにその系譜を検討する糸口となる朝鮮半島出土軒瓦資料を総合的に検討する。その中で、7世紀代を中心としつつ、6~8世紀の日朝交渉の一側面を瓦から浮き彫りにする。 これまで集成を重ねた日朝の軒瓦(創建段階を中心に)資料から、特に直接的な系譜関係を抽出し得る資料を抽出し、その文様的、製作技法的な棺形成について検討を深めた。前年度より注目していた新羅系資料の抽出に注意を払う必要があり、今年度も慶州地域の瓦資料を国立慶州博物館や国立慶州文化財研究所にて資料見学を行った。また、益山王宮里遺跡と飛鳥寺禅院出土軒瓦の関連性を今一度確認するために、資料見学を行った。 また、国立歴史民俗博物館に所蔵されている瓦コレクションのうち、紀伊上野廃寺出土軒瓦に注目し、新羅の瓦製作技法との関わりを検討した。以前より指摘されていたことではあるが、新羅に特有な「包み込み技法」によって軒平瓦が製作されていることを再確認し、直接的な系譜関係が可能であると判断した。紀伊上野廃寺が双塔式の伽藍配置である点も新羅との関係をうかがわせるものである。この点で、本研究において最も主体的にあつかった、同じく双頭式伽藍配置をとる本薬師寺と慶州四天王寺との関係を傍証する資料として評価できるであろう。 これまで、瓦製作をはじめとする寺院造営に関わる様々な技術、情報については、飛鳥寺造営の経緯から百済との関係が強調されてきた側面は否定できない。しかし、今回の研究によって、7世紀に日本(倭)が新羅からも様々な情報を瓦摂取していた状況が明らかとなった。その背景として、朝鮮三国の抗争の中で、折を見て倭との提携を模索する新羅の姿を認めることは許されよう。
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Research Products
(2 results)