2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代日韓における土木技術の系譜にかんする考古学的研究
Project/Area Number |
21720294
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所 |
Principal Investigator |
青木 敬 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10463449)
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Keywords | 掘込地業 / 版築 / 百済 / 新羅 / 中国北朝 / 官衙 / 掘立柱建物 / 柱掘方 |
Research Abstract |
日韓古代の土木技術について比較検討し、分類・編年をおこなった上でその技術的系譜を復元する。こうして得られた所見をもとに古代日本の歴史的評価を与えようとするのが本研究の目的である。 平成23年度は、日韓双方において掘込地業と版築という、寺院や宮殿などの大規模建築にしばしば付随する要素を検討対象として、まず事例収集をおこなった。日韓における類例は、ほぼ収集が完了したので検討に入り、塔における掘込地業の厚さの変化によって年代変化が追えることを明らかにした。また、版築には、A.礫と土を交互に積み固めるもの、B.一定の厚さで異なる土に変えて積み固めるもの、C.1種類の土だけで版築するものと大きく3種類に分けられることも明らかになった。この分類に基づき収集した事例の分布や時期を検討すると、Aは新羅、Bは百済、Cは中国北朝に顕現し、日本にはまず6世紀末にBが、その後8世紀にAが将来され、Cは7世紀代に少数みとめられることが判明した。さらにAB双方の影響をうけて成立したもの(AB)も存在する。これら将来された時期は、百済や新羅との外交関係が密接に関わることが予想され、土木技術は対外関係などの政治的要素を強く反映する場合があることが明らかとなった。こうした検討成果を2本の論文(1本は入稿中)および口頭発表(1回)で公にした。 このほか、古代官衙における掘立柱建物の柱掘方形状の分析から、建物の造営体制や員数などの復元が可能になるのではないかとした研究もすすめ、その結果、10名で1グループという役夫の体制を推定するに到った。また10名でないグループも地方官衙に存在することを明らかにし、官衙の建物造営に際しては地域性がうかがえるとの結論を導出した。この点については、第15回古代官衙・集落研究会の席上にて口頭発表をおこなった。
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Research Products
(6 results)