2010 Fiscal Year Annual Research Report
地域史を活用したオルタナティヴな「多文化共生」像の構築に向けた試行研究
Project/Area Number |
21720304
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
福本 拓 三重大学, 人文学部, 非常勤研究員 (50456810)
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Keywords | 多文化共生 / 在日朝鮮人 / 集住地区 / 地域史 / アクションリサーチ |
Research Abstract |
本研究の目的は,「地域」を既存住民とエスニック集団住民による問題共有のための基礎的枠組み・空間的スケールと捉え,「地域」をベースに,ボトムアップ的な「多文化共生」像の構築を目指すことにある。 (1)社会地図の展示:主に,生野区地域福祉アクションプランを拠点に,生野区役所・社会福祉協議会・町会関係者・福祉NPO関係者と協働で,在日住民の現状を広く知ってもらう住民座談会を開催してきた。その際社会地図をポスター印刷したものを掲示し,「地域」に対する「気付き」を喚起する取り組みを行った。地域住民からは,驚きをもって評価されるケースも多々あり,本研究の第一段階としては一定の成果を得たといえる。なお,この試みのスピンオフの成果として,小地域統計を用いてGISによる集住地区の析出を行った論文が『地理学評論』誌に掲載された。 (2)市民運動データベースの作成:地域住民からの資料提供については,当初予定通りに進捗することはできなかった。しかし,生野区・東大阪市にて市民活動を展開してきた団体より,過去の資料の提供を受けた。その中で特に資料的価値が高いのは,同地域での「密航者」に関する支援活動の資料である。これまでの研究で看過されてきた生野区における在日住民の特徴として,戦後の「密航者」の占める割合が予想以上に高いことがある。彼らをめぐる排除の実相や支援の実態を「見える化」することは,地域で潜在的に育まれてきた「多文化共生」のための土壌を住民に認識してもらえる点で,非常に意義の大きいものと考える。本年度は,これら資料の一部について,FileMakerを用いたデータベース化を行い,「見える化」のための基盤整備に取り組んだ。
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