2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ統合下の越境的な地域連携における新たな地域形成とガバナンスの可能性
Project/Area Number |
21720305
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
飯嶋 曜子 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (20453433)
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Keywords | ヨーロッパ統合 / 地域連携 / 国境地域 / 地域形成 / ガバナンス / 国際情報交換 / ドイツ:スイス:フランス |
Research Abstract |
本研究は、国境地域における越境的な地域連携の形成と発展の過程を、新たな地域の形成という観点から捉え直し、実証的に分析することを通じて、そこにおける新しい地域ガバナンス(地域統治)のあり方や地域形成のメカニズムを考察することを目的とするものである。調査対象として、スイス・ドイツ・フランスの国境地域であるオーバーライン地域を選定し、企業・大学・自治体などの多様な地域主体が参参加するライフサイエンス関連産業支援であるBioValley事業を対象事例とした。 平成23年度は、過去2年間の調査研究の結呆を踏まえ、必要に応じて研究計画を修正・精緻化し、さらなる情報の収集と分析に従事した。 2012年2月に約2週間、オーバーライン地域で現地調査を実施した。今回の調査では、前年度に引き続き、バーゼルを中心に行った。バーゼル大学地理学教室、フライブルク大学地理学教室、北西スイス経済研究所等で現地研究者との議論の機会を得るとともに、BioValley事業に参加する主体へのヒアリング調査を実施した。調査の際には、BioValley事業での連携と、EU、国、州、県などの諸政策との関係に重点を置いた。 その結果、いわゆるリーマンショック以降の世界的不況が、オーバーライン地域のライフサイエンス産業の動向にもを及ぼし、越境的地域連携の発展にも新たな変化がみられはじめたことが明らかになった。また、当該事業へのEUの政策的支援の終了が予測されるという環境の中で、国、州、自治体、そして企業が、これまでのオーバーライン地域における越境的連携とは異なるタイプのネットワークを模索しつつあることも明らかになった。 なお、平成21年度および平成22年度までの研究成果を、論文として発表した。これは中間報告という位置づけであり、最終年度にむけて、今年度の研究によって新たに明らかになった知見を踏まえて議論を展開していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現在までおおむね順調に進展している。各年度に現地調査を行い、データ収集を行ってきたとともに、現地の研究者や調査対象者との継続的な関係を構築してきたため、研究の遂行において大きな問題は生じていない。研究成果の発表については、ヒアリング対象者等の都合の関係から、年度末に現地調査を実施せざるをえないため、その後の分析・考察を経て論文として当該年度内に発表することが厳しいスケジュールとなっているものの、すでに成果の一部は発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、これまでの調査結果を踏まえて、BioValley事業を通じて新たに創造された地域ガバナンスの実態調査と、既存の種々のガバナンスとの関係、それによって生じる問題を明らかにする。二週間程度の現地調査を実施し、ヒアリング調査や統計資料等の収集を行う。同時に、平成23年度の調査で明らかになった経済環境の急激な変化に伴う状況の変容を把握し、越境的連携への影響を分析するため、過去に調査を行った地域主体についても必要があれば再度のヒアリング調査を実施する。 以上の現地調査による分析結果を踏まえたうえで、地域ガバナンス、およびヨーロッパ統合研究における三層構造的枠組みやマルチレベル・ガバナンス論に関する理論的考察を進める。 本研究の最終的なまとめとなる研究成果を、学会で発表し学会誌に投稿する。
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Research Products
(1 results)