2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国における回族の宗教的・経済的ネットワークと地域社会の変容に関する研究
Project/Area Number |
21720306
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高橋 健太郎 駒澤大学, 文学部, 准教授 (30339618)
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Keywords | 文化地理学 / 社会地理学 / 中国 / 回族 / 地域社会 / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
本研究においては、2010年度前半は、(1)前年度中国でのフィールドワークで得た資料の整理と分析、(2)大学図書館や書店、データベースにおける中国の地域変容や民族政策などに関する文献や統計、地図資料の収集を進めた。これらの結果、中国の西部開発政策によって西部地区において道路や鉄道、電力、都市ガスなどのインフラ整備が進み、土木・建設業や製造業、小売業、観光業などの産業は成長し住民の所得も増加したが、都市・農村間の経済格差は依然として大きく、条件不利地域の産業振興や生活条件の改善が求められていることがわかった。中国寧夏回族自治区や青海省、甘粛省など西北地方において回族をはじめとするムスリムの非営利民間団体は、近年、農山村の貧困救済や医療・教育支援、農業支援を活発に行なっており、これは、地域間の経済格差を緩和する役割を果たしており、また行政村や集落スケールの回族の地域社会の変容にも影響を与えている。これら民間団体の取り組みは、中国ムスリムの社会ネットワークを構築・強化する役割も果たしており、ひと、もの、かね、情報、知識の移動を活性化させていることが予察された。そのため、その実情をより深く理解するために、フィールドワークの日程や実施方法について中国の研究協力者と協議し準備を進めた。しかし、9月、日中間の領土問題をめぐる摩擦が起き、その後中国各地で反日運動が続発したことによって、中国でのフィールドワークや学術交流は困難となり、当初計画を変更せざるをえなくなった。これを受けて、2010年度後半も日本国内において、本研究課題に関する文献、統計、地図資料の収集と分析を継続した。これらの資料収集と分析は、来年度以降の調査、研究の充実に寄与すると考えられる。さらに、今年度は研究成果の発表を進め、図書を分担執筆するとともに、本研究課題に関連する図書の書評を発表した。
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