2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国における回族の宗教的・経済的ネットワークと地域社会の変容に関する研究
Project/Area Number |
21720306
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高橋 健太郎 駒澤大学, 文学部, 准教授 (30339618)
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Keywords | 人文地理学 / 中国 / 回族 / 社会ネットワーク / 地域社会 |
Research Abstract |
平成23年度、本研究においては、年間を通して、(1)大学図書館や書店、データベースなどにおいて中国の地域変容や少数民族社会などに関する文献や統計、地図資料の収集、および(2)収集資料の整理と分析、考察を進めた。これらの結果、中国の西部開発政策によって西部地区において道路や鉄道などのインフラストラクチャーの整備が進み、建設業や製造業、小売業、観光業などの産業は成長し住民の所得も増加したが、都市・農村間の経済格差は依然として大きく、山間部農村などの条件不利地域の生活条件の改善や生態環境の回復が求められていることが再確認できた。また、申国西部地区では、生態移民政策のもと、山間部の条件不利地域から平野部の灌概可能地域への大規模な集団移住が進んでおり、山間部住民の生活条件の改善が期待されていることも確認された。このような集団移住により、回族地域社会の間において人や物、金銭、知識などの移動が活性化し、社会ネットワークの拡充と地域社会の変容が予察された。これを受けて、平成24年3月、中国寧夏回族自治区の山間部と平野部の農村や行政機関を訪問し、生態移民や新農村建設などの政策と回族の社会ネットワークの変化との関係について聞き取りと資料収集を実施した。その結果、政府主導による大規模な集落移転と地域開発が、住民の生活や就業に大きな影響を与えていることが理解できた。その際、日常生活においてイスラームの影響を強く受けている回族にとっては、所得向上のみではなく、目々の礼拝や祭日の儀礼などの宗教活動を順調に行なうことができる施設と環境を強く望んでいることがわかった。地域開発に際して、経済的効率のみでなく、マイノリティの社会や文化が尊重されているかどうかを今後も注視する必要がある。さらに、2011年度は研究成果の発表に取り組み、学会発表を1回行なうとともに、図書2冊を分担執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集やフィールドワーク、資料の整理と分析、考察などをおおむね計画通りに行なうことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は補助金交付期間の最終年度であることから、資料収集やフィールドワークとあわせて、分析と考察をより積極的に推進する計画である。
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