Research Abstract |
2000年以降,神戸ケミカルシューズ産業は急激に衰退している。これにともない,産地の生産分業構造はその規模を大きく縮小させ,製造卸は中国からの完成品,および半製品を仕入れる中間業者の役割へと変化している。さらに海外生産への移転もみられるようになった。そのため,産地内での外注加工量は急減し,裁断,縫製などの加工業者が急減している。また,生産分業構造のオルガナイザーであった製造卸は,企画デザイン開発を重視し,通信販売を中心とした営業販売機能の拡大をはかる傾向にある。このような傾向が続けば,それはこれまで維持してきた集積の利益の崩壊,産地としての存在意義を失う事を意味する。現在形成されている一部のリーディング企業と加工業者の小規模なネットワーク集団は,産地としてではなく,企業ブランドを核として生き残る選択をとっていると推察できる.そのようななか,企業ブランドの構築,または産地活性化への起爆剤として若者グループの取り組みが注目される。今後,産地ブランドではなく,企業ブランドの構築にむけた個々の企業戦略が重要になると考えれば,若者のセンス,価値観は大きな競争力になるだろう。 しかしながら,これまで大半のメーカーは,問屋から受注および様々な情報の大半を依存してきた。この点において,企画・デザイン力,営業販売能力を備えるメーカーが増加してきたとはいえ,はたして集散地問屋との競争に対抗できるのかという疑問が残る。メーカーは営業販売機能を強化しつつも,生産機能を残しつつ,GAP,ユニクロを代表とするような近年のSPAのように,生産者が自ら企画・営業機能を持ち,自社もしくは産地内で生産していくことこそ競争力につながるのではないだろうか。自社が生産体制を維持する,または産地内の加工業者と結びつきをはかることで,付加価値の高い製品を有することが可能となり,企業の競争力につながると考える。
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