2010 Fiscal Year Annual Research Report
パプアニューギニアにおける資源開発とエスニック・アイデンティティーの相互作用
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21720319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田所 聖志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (80440204)
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Keywords | 文化人類学 / 石油開発 / 地域主義 / アンガ / テワーダ |
Research Abstract |
平成22年度は、平成23年2月から3月にかけて、パプアニューギニアの首都ポートモレスビー近郊で追加の現地調査を実施した。平成21年度には、学校教育や医療制度の導入、都市部との往復移動、現金経済の浸透、交通基盤の整備といった社会変化の中に石油開発を位置づけ、エスニック・アイデンティティーの発生過程を考察する必要があるという知見を得た。それを踏まえ、現地調査は、出身村から離れたゴム・プランテーションで契約労働に従事するテワーダの人々を対象とした。現地調査では、僻地であるテワーダの領域から都市部への移動経緯、ならびに、都市部での経験による自己アイデンティティーの変化と出身地域の捉え方への影響について聞き取りを行った。そこでは、石油開発の試掘事業には急速な進展が見られない一方、テワーダの人びとによる土地法人の組織化という動きがあることも確認された。さらに、テワーダ、カメア、メンイェの3集団に関するインタビュー資料と文献資料の分析を開始した。インタビュー資料の分析は、ボイスレコーダーに記録した音声録音を文字化した後、質的データ分析支援ソフトを利用した。これまでの分析で、石油試掘は、地域社会のアイデンティティーを喚起させる大きな契機であったと同時に、都市部との往復移動も大きな影響を与えているこが明らかになった。また、社会変化の理想像として語られる内容は、移動先で見聞きするプランテーションの設立によって変化した地域社会であることが分かった。
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