2011 Fiscal Year Annual Research Report
モロッコにおける「先住民」運動の成立と展開をめぐる歴史人類学的研究
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21720320
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (90508912)
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Keywords | 人類学 / モロッコ / ベルベル / アマズィグ / 先住民 |
Research Abstract |
2011年にモロッコではチュニジアに端を発したいわゆる「アラブ革命」の影響を受けて、憲法改正や、「民主化」に向けたその他の様々な改革がなされるなど大きな政治的転換が起きている。同時に、2011年2月以降各都市で継続的に形成されているデモにアマズィグ運動に関わる青壮年層が主体的に加わるなど、2010年にはなかった新たな局面が特徴的にみられるようになった。 こうした社会的・政治的局面における新たな潮流を受けて、2011年度には、現地における実態調査を都市部および地方部において実施するとともに、モロッコにおける「民主化」に向けた潮流の中でアマズィグ運動と拮抗/協調関係にあるイスラーム神秘主義教団(スーフィー教団)やイスラーム主義団体との関係、メディアの活用などにも目を向けつつ、研究を進めた。その研究成果の一端は、「現代モロッコにおけるスーフィー教団の展開」,「通信の技術革新は中東世界をどう変えたか」などの口頭発表において提示した。 これらの成果発表を踏まえて、本年度の研究目的の主軸にあったアマズィグ運動の成立とその歴史的展開および現状の解明に向けて、「モロッコにおけるアマズィグ運動の成立と展開」、「<非境界型世界>という視座から<地域>を再考する」と題して研究成果の一端を明らかにした。 アマズィグ運動が置かれた社会的状況に対する多角的理解を踏まえたうえで、2010年末以降のいわゆる「アラブ革命」の潮流とも関連づけて運動の新たな様相を明らかにしたこれらの研究は、北アフリカにおける先住民運動研究に新たな視座をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究の主たる目的として、いわゆる「アラブ革命」や「グローバル化」への視座と積極的に交錯させつつアマズィグ運動の展開と現状の解明を行うことを掲げた。この目的遂行に向けて、現地調査の実施を通じてアマズィグ運動の現状について新たな情報を得たうえで資料分析を進め、完全原稿を用意したうえで「モロッコにおけるアマズィグ運動の成立と展開」と題した研究成果を発表したほか、合計4本の研究成果発表を行っており、論文としての発表準備も着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、まずこれまでの研究成果発表をもとに執筆を進めてきた諸論考の完成と、学術雑誌などへの投稿が挙げられる。それと並行して、「アラブ革命」勃発後、予断を許さない政治的状況にある中東諸国の状況を鑑み、現地調査を通じて最新の調査資料を新たに入手するとともに、その分析に努め、アマズィグ運動の今後の展開の把握に努めてゆく。
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Research Products
(4 results)