2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハワイ・ホノルル大都市圏における沖縄系コミュニティの持続と変容に関する研究
Project/Area Number |
21720322
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原 知章 静岡大学, 人文学部, 准教授 (00287947)
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Keywords | ハワイ / 沖縄 / コミュニティ / トランスナショナル |
Research Abstract |
本研究は、沖縄とハワイを結ぶトランスナショナルなネットワークに焦点を当てた多現場民族誌を作成するプロジェクトの一環として実施されるものである。本研究では、特にホノルル大都市圏を中心に展開してきた沖縄系コミュニティに注目し、その持続と変容の過程を明らかにする。今年度の研究では、ハワイにおけるエスニック関係の歴史のなかに沖縄系コミュニティの持続と変容の過程を位置づける作業を行なった。ハワイにおけるエスニック関係の歴史において重要なのは、世界各地からハワイに移住した人びとがエスニック集団として統合・分化していく「エスニック化」の過程が進んできたのと同時に、20世紀以降は、エスニックな文化やアイデンティティが希薄化していく「脱エスニック化」の過程もまた、進んできたという点である。特に後者の脱エスニック化に関していえば、(1)非白人系のエスニック集団の間の相互作用を通じて、「ローカル」な文化やアイデンティティが広がってきた「ローカル化」の進展、(2)異なるエスニック集団間のインターマリッジの広がりによる「ミックス化」の進展、(3)文化やアイデンティティの面の「アメリカ化」の進展が重要である。しかし実は、このような脱エスニック化は、単にハワイの人びとのエスニックな文化やアイデンティティを希薄化させただけでなく、エスニックなアイデンティティの再編や強化にもつながってきた。たとえば、ミックス化が進んできたなかで、逆説的に「純粋なオキナワン」という概念が広がりを見せるようになったのである。このようなエスニック化と脱エスニック化の複雑な関係に加えて、第2次大戦後の日系人の社会上昇やアメリカ本土のエスニックリバイバルの影響から、近年の同時多発テロやリーマンショックに至るまでの様々な出来事も、現代のハワイにおけるエスニック関係のありよう、そして沖縄系コミュニティのありように多大な影響を与えてきたのである。
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