2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代北インドにおける「不可触民」の仏教改宗運動と生活実践に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
21720327
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
舟橋 健太 Japan Women's University, 人間社会学部, 学術研究員 (90510488)
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Keywords | 北インド / 「不可触民」 / 仏教 / 改宗 / 文化人類学 |
Research Abstract |
平成21年度においては、現代北インドにおける「不可触民」の仏教改宗運動と、かれらの自己意識ならびに生活実践について、文化人類学的な研究を行った。具体的には、ウッタル・プラデーシュ州を主な対象地にすえて、独立以降漸進的に拡大している仏教改宗運動と、かれら「改宗仏教徒」(元不可触民、チャマール)たちの自己意識のありようならびにその発露である儀礼実践・生活実践について、現地調査のデータを基に分析・考察を行った。またこの分析・考察を基にした各種の研究発表を行ってきた。うち、2009年5月に開催された日本文化人類学会においては、「改宗」に焦点を当てて、また、同年8月の国際学会(アジア研究者国際会議)ならびに10月の日本南アジア学会においては「仏教改宗運動」に焦点を当てて、研究発表を行った。加えて、こうした近年の不可触民による仏教改宗運動の創始者ともいえるアンベードカルという人物について、特に彼の「カースト」観に焦点を当てた小稿を、2010年1月発刊の『季刊民族学』に寄稿した。 これらの研究発表ならびにそこに至るまでの分析、そして発表を受けての考察においては、以下の諸点を明らかにすることとなった。すなわち、改宗仏教徒たちが、過去・現在の被差別的状況への反発/からの脱却を志向して、仏教への改宗を遂行しつつも、改宗前から引き続く、親族・姻族ならびに地縁関係といった各種の他者との関係性を維持するため、さまざまな宗教実践を行っていること(あるいは行っていないこと)、仏教改宗運動の展開において、異カースト間に新たな関係性がみられ得ること、そしてそこに、従来の研究においては等閑視されてきた、改宗の継続的側面とカーストを越えた関係性のありようを確認することになった。これらの諸点は、「改宗仏教徒」研究はもとより、「不可触民」研究ならびに「改宗」研究に、強い意義と重要性とを有するものといえよう。
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