2011 Fiscal Year Annual Research Report
GPS・GISを活用した自然資源の伝統的管理システムと資源利用に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21720335
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Research Institution | 新潟県立歴史博物館 |
Principal Investigator |
大楽 和正 新潟県立歴史博物館, 学芸課, 研究員 (20526959)
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Keywords | GPS / GIS / 自然資源 / 森林 / 割山 / 資源管理 / 持続的利用 / コモンズ |
Research Abstract |
本研究の目的は、割山制度をめぐる自然資源の伝統的管理システムと資源の利用体系を明らかにし、地域社会における持続的な資源利用モデルを提示することである。 はじめに、干溝地区で保管する割山および土地利用等を記した区有文書の写真撮影と翻刻をすすめた。割山の区画を示した割山図については、デジタル画面上で汎用性の高い解析ができるよう分割撮影し、デジタル画像処理を行った。 次に、GPSを活用した調査については、割山の林野区画、資源採集のルートとエリア等をGPSで歩行計測した。資源採集エリアについては、集落から比較的近い場所では春先にポイ(薪)伐りを行い、集落から遠い共有地では秋に炭焼きを行っていた例が多く、表層雪崩の発生が大きく左右する。豪雪地帯である干溝における山の利用は、全てが一様に進められたのではなく、利用する各々が雪と対峙するなかで利用地を区分けし、効率よく柔軟に行われていた実態が明らかになった。 干溝の割山制度とは、従来の共有林利用のあり方が商品経済に組み込まれていく中で、そこで生じた困難を克服し、村落の社会秩序を維持するための制度として成立した側面が大きいと考える。割山制度とは、あくまでも土地の利用権の分割であり、その所有権は干溝地区に帰属する。しかし、割山制度が成立したことによって、共有林内には個人名義が発生し、共有林の利用は個々の割当地を中心に展開されていくことになった。割当てられた土地の使い方は個々の利用者に委ねられ、各自が自家の生活に応じて割当地をデザインしていくことができた。割由制度とは、いわば自然環境の中に人為的な個性を生みだすシステムであったといえる。以上の研究実績は、研究成果報告書にまとめて刊行した。
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