2009 Fiscal Year Annual Research Report
米国連邦行政規制による州不法行為法の専占――製品安全規制・金融取引規制を中心に
Project/Area Number |
21730003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
会澤 恒 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70322782)
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Keywords | 連邦制 / 専占 / 裁判所の裁量 / 行政庁の専門性 / 抑止 / 損害填補 / 行政規制 / 製品安全 |
Research Abstract |
本年度は具体的問題分野の内、製品安全規制の領域について主として検討した。連邦行政庁による規制が州不法行為法上の責任を専占するかについて、裁判所は判断において関連する連邦法・行政規制と州法との解釈問題のとして論点を定式化して審査し、結論についても専占を肯定するもの・否定するものとが入り交じっている。近年でも、裁判所が専占を否定し、州法上の責任の審理を認める例は散見される(e.g., Wyeth v.Levine, 129 S.Ct.1187(2009))。これについて、裁判所には、不法行為法の理解について、被告の行為に対する規制として把握する視座と、原告の損害の補償として把握する視座とが交錯しているとの見解が注目される(Sharkey教授)。その上で、制度的な布置を配慮に入れた判断基準が検討されている。具体的には行政庁が特定のリスクに対して具体的な判断を下していたかによって裁判所は専占の可否を決するべきで、これにより行政庁の専門的能力を活用しつつその活動に対してチェックを加えることができる。また、専占肯定=賠償責任否定、専占否定=賠償責任肯定と単純に考えるのではなく、州法上の責任の基準のみを連邦法が専占するというモデルも考えられる。本研究は (1) 連邦vs州の軸と (2) 行政部門vs私人による司法利用の軸とを別々のものとして立てているが、このように分離して考察を加えることで、可能な法的対応の幅が広がることが確認された。他方、本研究の第2の具体例として措定している金融取引市場規制について、政権・連邦議会ともに新たな立法措置の方向性が定まっていない。政治状況も睨みながら動向を注視したい。
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