2010 Fiscal Year Annual Research Report
米国連邦行政規制による州不法行為法の専占――製品安全規制・金融取引規制を中心に
Project/Area Number |
21730003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
会澤 恒 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (70322782)
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Keywords | アメリカ合衆国 / 連邦制 / 専占 / 不法行為法 / 不法行為改革 / 行政規制 / 抑止 / 損害填補 |
Research Abstract |
米国の連邦行政規制と州不法行為法との相克を扱う本研究は、その主題を歴史的コンテクストへの定位という視角から分析を加えた。連邦行政規制による州不法行為法の専占は比較的最近に前景化した現象であるが、これは、民事責任を拡張する基調にあった戦後の不法行為法のトレンドは対する反撃としての<不法行為改革>の一部をなす。<改革>推進派は複数の法形成フォーラムを切り替えつつ、そのアジェンダを推進している。だがこのことから、<改革>手法の間で緊張関係をはらむ場合があり得ることも見出された。例えば、医薬品や医療器具について連邦行政規制の遵守がこれらの製品の製造物責任を専占するかという論点につき、問題となっている規制立法や行政規則の文言や経緯により、裁判所の判断は分かれており、そこで専占効を明示するようメーカー等は議会等に働きかけている。しかし、医薬品等は多くの場合、医師による処方を通じて使用される。専占が生ずることによって医薬品や医療器具のメーカーは製造物責任を免れるかも知れないが、被害を被った患者は処方した医師に対して(<改革>の主要分野の一つである)医療過誤訴訟を提起してその増大を招くかも知れない、と指摘されている。アカデミックにはこの問題は、複数の法形成フォーラムが並立している状況において、適切なフォーラムはどこか、というinstitutional choiceをめぐる政策問題として問いが定式化される。このように問いが定式化されるということは、その前提として、民事訴訟を通じて実現される不法行為法と行政規制の目的が連続し、ないしは同質であると米国では考えられていることを指摘した。すなわち、前提問題として、前者の不法行為法の第一義的な目的が事故の抑止にあるということが(再)確認されることとなる。裏を返すと、一連の議論を通じて、損害填補に対する関心が低下していると評価し得る。
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Research Products
(5 results)