2009 Fiscal Year Annual Research Report
フランス不当利得制度の研究――仏独私法の邂逅に関する比較法的事例研究
Project/Area Number |
21730004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 哲志 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (50401013)
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Keywords | 不当利得 / フランス法 / コンディクチオ / 原因 / action de in rem verso |
Research Abstract |
研究計画第1期[平成21年度前半]には、フランス利得返還法の一つのモデルであり得たコンディクチオ(condictio)について、本研究が対象とするaction de in rem versoとの対照が試みられた。その成果は法学協会雑誌上で連載中の拙稿「フランス法における返還請求の諸法理-原状回復と不当利得-」の第2回、第3回に反映されている。そこでは特に、コンディクチオ行使の主たる要件に関わる「原因(cause)」の概念が契約の有効要件である「原因」の概念といかなる関わりを持つのか、が明らかにされた。これは「action de in rem versoのコンディクチオ化」をフランス法に潜在するバイアスの発現と捉える本研究にとって、次の問いを投げかける。すなわち、一旦はコンディクチオと袂を分かった「原因」概念が、19世紀の後半に至ってaction de in rem versoとともに再登場するのはなぜか。構造的な問題が示唆される。この概念が果たし得る役割を解明しなければならない。問いの深化は予想以上の成果であった。なお時期が前後するが、平成21年6月6日開催の比較法学会第72回総会において、本研究によって開かれるべき展望に関してそのエッセンスを公にする機会を得た。第2期[平成21年度後半]はパリ第2大学への滞在期間に重なる。第1期で着実に得られた成果を基に、本研究の実証性を支える部分の進捗が図られた。とりわけ、その基幹となるツァハリエとオーブリー&ローの系譜学的分析を開始した。他方、フランス人研究者との意見交換の中から、また、新たに公刊された重要な論考(F.Rouviere, L'evaluation des restitutions apres annulation ou resolution de la vente, RTD civ.2009, pp.617 et s.)から、現代利得返還法に対して複数のアプローチ(一般理論の構築か、類型的考察か)が採られ得ることを学び、次年度における法比較の視点が涵養された。
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