2011 Fiscal Year Annual Research Report
民主化過程における「法の支配」―インドネシアにおける「法の支配」アクターの研究
Project/Area Number |
21730007
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80410851)
|
Keywords | インドネシア / アジア法 / 体制移行 / 民主化 / 法の支配 / 比較法 / 法と開発 |
Research Abstract |
本研究は、インドネシアが権威主義体制からスハルト大統領辞任を経て、2000 年代初頭に議会制民主主義体制へと変化を経験した期間について、(1)インドネシア法律扶助協会、(2)国家人権委員会、(3)憲法裁判所が、インドネシアにおける「法の支配」の発展に与えた影響を、事例研究(判例、法令運用事例、事件調査報告事例、勧告事例など)および関係者からのインタビューを通じ多角的に分析し、民主化プロセスにおいて「法の支配」が具体的にどのような役割を果たしているか明らかにすることを目的とする。本年度は、昨年までの関連する研究成果を二つの論文(島田弦「平和構築における法制度改革-東ティモールの司法制度構築を事例として」『国際開発研究』20巻2号、2011年11月、65-78頁、および島田弦「インドネシアにおける法の支配と民主化-移行過程における法律扶助運動」『国際開発研究フォーラム』第42巻、2012年3月、105-123頁)として発表し、また関連成果を、国際学会報告(SHIMADA Yuzuru, "Recent development of legal system on disaster management in Indonesia and its function: The role of law to support sustainability of society under the disaster")、および国内学会報告(「法整備支援の多様化の様相」)として発表した。平成23年度は、憲法裁判所と国家人権委員会についてより立ち入った補足調査を行い、民主化に前後して強化された司法機関・準司法機関について調査を行う予定であったが、インドネシアにおいて協力して調査を行っている研究者の都合により、平成23年度中の調査の一部を平成24年度に繰り越して行うこととなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年までの関連する研究成果を二つの論文(島田弦「平和構築における法制度改革-東ティモールの司法制度構築を事例として」『国際開発研究』20巻2号、2011年11月、65-78頁、および島田弦「インドネシアにおける法の支配と民主化-移行過程における法律扶助運動」『国際開発研究フォーラム』第42巻、2012年3月、105-123頁)として発表し、また、本研究に関連して国際学会報告(SHIMADA Yuzuru, "Recent development of legal system on disaster management in Indonesia and its function: The role of law to support sustainability of society under the disaster" at 8th Asian Law Institute (ASLI) Conference in Fukuoka on 26th May.)、および国内学会報告(島田弦「法整備支援の多様化の様相」アジア法学会シンポジウム『法と開発の多様化と深化-アジアにおける動向と影響の検討』、富山大学、2011年6月19日)を発表した。しかし、インドネシアにおける法律NGO、憲法裁判所への聞き取りを本年度後半に、インドネシア側の協力研究者と行う予定であったが、相手方の事情変更により24年度へ延期せざる得なくなり、科研費執行について繰り越し申請を行った。したがって、本年度末までの研究は主としてこれまでの資料について精査・分析する手法が中心となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、インドネシア法律扶助協会、国家人権委員会、憲法裁判所という本研究事業の核となる機関と、多くの大学研究者にインタビューし、民主化移行における「法の支配」概念の位置づけをまとめてきた。特に、法律扶助協会をはじめとする、法律分野のNGOについて重点的な調査を行い、その成果をまとめてきた。本年度は、憲法裁判所と国家人権委員会についてより立ち入った補足調査を行い、民主化に前後して強化された司法機関・準司法機関について調査を行う。また、平成23年度に予定していたが、行えなかったインドネシアでの共同研究者との聞き取り調査を、相手方との調整の上で早い時期に行う。 上記の調査と資料分析をもとに、司法・準司法機関の役割と民主化の主たる論点(行政権の制限と三権分立のあり方がインドネシアの文脈においては重要)に関する成果をまとめる。
|