2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高谷 知佳 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50362562)
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Keywords | 法制史 / 日本中世史 / 都市法 / 比較都市論 / 都市文化 / 中世都市 / 宗教勢力 / 儀礼 |
Research Abstract |
本年度は、(1)都市権力と宗教・文化に焦点をあてて研究を行い、(2)その成果を踏まえ、都市の宗教・文化が、日本中世都市の法制度や権力構造に、どのように反映されるかを研究した。この観点のもとに、学際的な学会・研究会活動を積極的に行った。 (1)について、論文「室町期の大織冠破裂」(『法学論叢』167-3、2010)によって、多様な表出形態をとる「神仏の怒り」を通して、宗教権力が自らの存在価値を主張し、国家権力がそれを収拾することで社会の危機管理を行うという、前近代社会の相互依存的な宗教的システムを、中世末期の具体的な政治過程に即して検討し、国家と首都の関係が背景にあること、単線的な宗教性の衰退ではなく法的・イデオロギー的混乱と濫用がみられることを指摘した。宗教的法理は日本中世社会の賦課・流通・訴訟にも強い影響を及ぼしており、この成果は日本中世史全体への課題提起となる。 学会・研究会活動でもこの観点を活かし、編者を務めた法制史学会60周年記念若手論文集『法の流通』について、法制史学会第62回大会において、合評会を企画・主導し、学際的な観点からの議論を図った。また、宗教・文化・権力の関係をテーマとする学際的研究会「東アジア怪異学会」で研究会委員を務め、共著『怪異学の可能性』(2009年3月刊、角川書店)の学際的書評会を2010年7月に開催し、都市権力と文化の観点から、美術史・国文学と対話するシンポジウムを2011年1月に開催した。 (2)については、法制史学会近畿部会・関西比較中世都市研究会や大阪歴史学会中世史部会例会での報告において、都市を統合・維持するための、「公共性」イデオロギー・「法圏」の設定について、比較史の観点をふまえて多角的な検討を加えた。これらは次年度の基盤となる。
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