2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高谷 知佳 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50362562)
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Keywords | 中世都市 / 都市法 / コミュニケーション / 商業史 / 公共性 / 比較都市論 / 中世京都 |
Research Abstract |
本年度は、最終年度として、(1)日本中世都市の権力の顕著な特徴である分権性について具体的に考察するために、そのネットワークやコミュニケーションに焦点をあてて研究を行った。西洋中世史において、分権的な社会における紛争や裁判を、権利関係を一律の基準を適用して確定させるものではなく、それを通じて社会の価値観や紐帯をさらに深める「コミュニケーション」ととらえる研究が進んでいるが、日本中世都市史においても、治安や商業をめぐる、一見無軌道にみえる紛争やその解決を、実情に即してとらえるために、非常に重要な論点であるといえる。(2)さらにその成果を踏まえ、日本中世都市の法制度や権力構造が、一律の基準のもとに支配される近世の都市構造へと、いかに変遷するかについても研究した。この観点のもとに、学際的な学会・研究会活動を積極的に行った。 本年度の成果としては、共編著『怪異学入門』(東アジア怪異学会編岩田書院、2012年4月刊行)に掲載した論文「古記録と怪異」によって、都市のメディアのあり方と、支配権力の盛衰との関連性を俯瞰した。また本書は、公開講座等のテキストなど、社会全体の発信をも予定しつつ編集に携わった。さらに、同会のシンポジウム「占いと予言」においては「中世末期の都市と二つの凶兆」という報告を行い、都市の公共機能をめぐる権力と社会の心性史について、総合的な検討を行った。これは本研究全体の課題の総括的な内容であり、現在論文を執筆中である。また、比較都市史研究会にて「中世奈良における商業紛争と権力」という報告を行い、商業紛争およびその解決について、「コミュニケーション」の観点を生かしつつ検討した。これまで権力から都市民に対する保守性が強調されていた商業紛争とその解決を、権力間の秩序の問題としてとらえることにより、都市と商業の相互関係およびそのコントロールを、今後の課題として提示した。これも現在論文を執筆中である。
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