2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の東アジアに於ける領事裁判に関する実証的研究
Project/Area Number |
21730011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中網 栄美子 Waseda University, 法学学術院, 研究員 (10409724)
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Keywords | 法制史 / 近代 / 日本 / 東アジア / 領事裁判 / 条約改正 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本が明治維新以降、西欧の法や法制度を継受しつつ近代化を推進する過程で、東アジア諸国において獲得した治外法権という特権をどのように行使し、その結果がどのような法的影響を現在に向かって及ぼしたのかを実証的に明らかにすることにある。日本による中国、韓国など東アジア諸国における領事裁判事例を主たる研究対象とするが、裁判に至らぬものの紛争となった事例についても調査・分析を行う。また、先行する西欧諸国による領事裁判事例や時代的に平行する日本国内における外国人交渉事件についても比較検討を行う。 平成21年度は、日本国内に所蔵される領事裁判史料について調査分析を進めるとともに、海外は韓国(8月)と中国(3月)に所蔵される領事裁判史料について調査を行った。韓国ではソウル大学・鄭肯植教授(韓国法制史)の助言を得て、韓国最高法院所蔵の韓末民事判決集の複写(52巻)を入手し、分析を行った。この判例集により、韓末(19世紀後半)に日本人を原告とする民事事件が100件以上あることが糊った。これらの事例は日清戦争以後、日韓併合に至る過程の中で日本が韓国の司法にいかなる影響を与えるようになったのかを知る上で重夏である。また、判決集の一部に日本による領事裁判の判決が含まれていることも判り、実際の判決の存在を確認することができた。中国では上海交通大学・季衛東教授(法社会学)の助言を得て、上海市档案館(公文書館)所蔵の上海共同租界会審(混合裁判所)関係の史料調査を行った。会審における日本人関係史料につき、一部の所在を確認することができた。共同租界には既にイギリス・アメリカなどの勢力が入っており、日本は遅れての参入になるが、所蔵資料は、日本が西欧諸国の法や法制度を目の当たりして、どのように近代化を進めていったのかを知る上で重要な手掛かりとなる。
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