2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730015
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
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Keywords | 司法省 / 法律顧問 / アメリカ合衆国 / 法務総裁 / 法務組織 |
Research Abstract |
本研究は、行政自身によるその適法性確保のためのシステム・組織の構築に向けて示唆を得ることを目的とし、アメリカ合衆国司法省の長である法務総裁の、政府内における法律問題に関する意見書作成の任務を対象としたものであり、特に原案作成を行う司法省内の法律顧問室に着目し、その行動様式と機能の分析を行った。これにより、法律顧問室が法務総裁の下に、執行府内の法律家として法解釈を示し、執行府の諸活動について法的側面から審査統御を行う存在として執行府の適法性確保に寄与してきた一方で、とりわけ近時の大統領の(憲)法解釈権という憲法学上の議論の高まりも背景に、執行府内の存在として司法省・法律顧問室が組織的に脆弱であり、この状況の下に法務総裁・法律顧問室の意見書に複数の対抗的な機能が認められることが明らかになった。他方、議会や司法省高官経験のある法学者らによる、法律顧問室内法律家の行動準則の提示や意見書作成過程の執行府内での透明化の主張が近時の法律顧問室に対してみられ、こうした批判的反応は、司法省内で政府訴訟を担当する訟務長官に対し15年ほど前にも近似して存在していたことも明らかになった。こうした執行府の適法性確保への役割に期待が向けられる司法省・法務総裁と、この役割を政府外私人にも与えるべく議会が創設してきた諸制度との関係を解明し、両者を包括して理解するための作業にも取りかかり、近時の合衆国における議論動向の一部を「キー・タム訴訟の原告適格と法の執行」名城法学60巻別冊(2010年)で紹介し若干の検討を行った。引き続き、合衆国政府の適法性確保、解怠是正のためのシステムのあり方を、法務総裁・司法省の法的位置づけと役割に検証の主軸を置いた研究を行う予定である。
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