2009 Fiscal Year Annual Research Report
「財政規律の時間的柔構造」の構想―財政規律と柔軟性を両立させる法制度設計論の探求
Project/Area Number |
21730016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤谷 武史 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (90313056)
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Keywords | 公法学 / 租税法学 / 財政法学 / アメリカ行政法学 / 立法学 / 財政学 / 契約の経済理論 |
Research Abstract |
本研究は、財政法上の概念に機能主義的再構成を施した上で法制度設計論に融合させ、プロセス全体として財政規律と柔軟性を両立させる《財政規律の時間的柔構造》を実現しうる法制度設計論の見通しを示すことを目的とする。この目的に向けて、本年度は、(1)《解釈という営みに開かれるがゆえに未知の状況への開放性と一定範囲内への規律付けを両立させうるという法概念の特性を踏まえ、これを機能主義的観点から法制度設計論へと接合する》という本研究の根幹をなす理論枠組みの構築と、(2)具体的な財政制度分析への応用による上記仮説の検証作業を行った。具体的には、(1)については、解釈論と制度論の架橋を試みる近時のアメリカ行政法学の動向や国内外で進展しつつある「立法学」の議論を踏まえて、主にアメリカ法を素材に政治・行政システムの動態に法システムがどのように対応しうるかに関する検討を行い、2本の研究論文を執筆した(「多元的システムにおける行政法学-アメリカ法の観点から」『新世代法政策学研究』6号(2010年4月公刊予定・校了済)、「「より良き立法」の制度論的基礎・序説-アメリカ法における「立法」の位置づけを手がかりに」『新世代法政策学研究』7号(2010年7月公刊予定・3月末入稿済))。(2)については、租税法・財政法と他の法政策分野(例:社会保障法・環境法)の交錯領域において、機能主義的に再構成された財政法上の概念が、解釈論を超えて法制度設計上も構成的な役割を担いうることを示した2本の研究論文(後掲の『ジュリスト』1397号、『新世代法政策学研究』3号所収論文)を執筆した。これらにより、具体的な法制度設計問題における本研究の理論枠組みの有用性が確認されるとともに、来年度の作業(「プレコミットメント」の立法学的・行政法的検討を通じて、「時間軸」による緩やかな規律けの分析を深化させる予定である)に向けた足がかりが構築できたものと考える。
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Research Products
(6 results)