2011 Fiscal Year Annual Research Report
「財政規律の時間的柔構造」の構想-財政規律と柔軟性を両立させる法制度設計論の探求
Project/Area Number |
21730016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤谷 武史 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (90313056)
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Keywords | 公法学 / 租税法学 / 財政法学 / 立法学 / 財政学 / 契約の経済理論 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までの理論的検討で得られた着想(アメリカ行政法学に示唆を得た制度設計論と法解釈方法論の接合や、ゲーム理論に立脚した「制度」概念の拡張)を基礎に、《財政規律の時間的柔構造》を可能とする法制度のあり方を検討した。この検討に際し、諸外国の財政規律のための制度改革の動向や国内における裁判例などの具体的素材の分析を重視し、業績を公刊した。(1)財政規律の確保のための議会と執政府の権限配分の問題につき、フランス財政法学の研究動向を紹介する書評(国家学会雑誌124巻9・10号掲載)を執筆し、本質的に政治的な問題である議会と執政府の権限配分を巡る言説が、当該憲法体制の歴史的経験に根ざした財政憲法上の規範に対して解釈学的が操作を施されることにより展開する様子を明らかにした。これは、《財政規律の時間的柔構造》が制度設計のみでは完結し得ず、解釈学的な自己複製のプロセスを加えて初めて存立する、という本研究の仮説を裏付けるものである。(2)《財政規律の時間的柔構造》の実現のためには、(1)財政運営に関わる諸主体の権限の初期配分(制度配置)と、(2)当該制度配置の上で適用される財政法規範を、状況の変化に応じた柔軟な(しかし規律自体は弛緩させない)解釈論、の双方への目配りとが必要となるところ、安易に財政法上の概念(例えば、執行部門の裁量)を拡張することが、初期制度配置の意味を改変し、さらに財政規律を弛緩させる、という負のフィードバックが作動する可能性には警戒を要することとなる。この観点から、.市が締結した賃貸借契約に基づく公金支出の違法性が争われた最高裁平成23年12月2日判決について批判的な検討を加えた判例評釈を公刊した。さらに、(3)議会自身による立法措置を通じた財政規律の確保の可能性と限界について本研究の検討を総括する論攷を近日中に公表する予定である。
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Research Products
(5 results)