2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカの「表現の自由」論の普遍性を、フェミニズムとフランスを参照して探る
Project/Area Number |
21730018
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田代 亜紀 Gunma University, 社会情報学部, 講師 (20447270)
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Keywords | 憲法 / 表現の自由 / フェミニズム / アメリカ / フランス / 普遍性 / 差異 |
Research Abstract |
本年度は、アメリカの「表現の自由」理論の普遍性について、第一の比較視座であるフェミニズムの観点から検証をした。具体的には、フェミニズムの議論のうち、「女性」という属性にこだわることをどのように理解するか、それが憲法解釈に如何なる影響を及ぼすか、というテーマで研究を進めた。いわゆる本質主義と呼ばれるものをどのように理解し、それを憲法解釈との関係でどのように捉えることかできるか、というのが本年度の問題設定であった。その問題設定に答えるため、ガヤトリスピヴァク(Gayatri Chakravorty Spivak)の議論を主に参照した。彼女は、「本質にまつわりリスクを引き受けること」、すなわち「本質主義を戦略的に利用すること」について論じている。彼女の議論を理解すること自体が難解な作業で、これをどのように憲法解釈との関係で取り人れるか、という点までに研究は達しなかった。そのため、論文という形でまとめることはできなかったか、貴重な研究上の蓄積を積むことはできた。また、憲法解釈にフェミニズムをどのように取り入れるかという点で、示唆的だったのが、ジェーン・ウォン(Jane Wong)であった。彼女の議論は、フェミニズムの本質主義に関する議論を、フェミニズム法学応用するもので、同時にフェミニズム法学が成立する困難さを指摘するものであった。周辺の議論をより参照し、考えを深めた上で、成果として公表したい。 本年度は、上記のように、アメリカの「表現の自由」に関する議論、フェミニズムに関する議論を多く参照したが、同時に、フランス憲法に関する研究会にも参加させていただき、次年度の研究計画である、アメリカ「表現の自由」理論の普偏性を検証する第二の視座、フランスの「表現の自由」理論の研究への足がかりを整えた。次年度は、この第二の視座に取り組むとともに、本年度にやり残したアメリカの議論も同時に進めていきたいと考えている。
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