2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730020
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
斎藤 一久 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50360201)
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Keywords | 憲法 / 基本権 / スティグマ / 人権 |
Research Abstract |
本研究は(1)ドイツ連邦憲法裁判における判例分析と憲法学説の研究、(2)アメリカ憲法学説との比較研究、(3)日本における展開可能性の検討を中心として行うことを全体としている。 今年度は、平成23年2月末までドイツにて在外研究に従事したことから、主としてドイツの判例理論を中心に研究を進めた。昨年に引き続き、スティグマをめぐるドイツ連邦憲法裁判における判例分析と憲法学説の研究について研究を実施した。 とりわけ介入(Eingriff)の概念について、フリードヘルム・フーフェンの基本権理論の整理を参考にし、すでに連邦憲法裁判所で問題となった信教の自由、表現の自由、営業の自由以外の領域についても体系化を模索した。これらを通じて、ドイツにおける介入概念は、主として基本権侵害を精査する機能を有するが、日本の憲法学の文脈ではむしろ侵害の発見的機能として捉えられるのではないかという仮説に至った。今後、当該仮説を日本国憲法の理論との比較の上、さらなる体系化を図りたい。またドイツでは介入概念が制御(Steuerung)や規制(Regulierung)とは別次元で論じられているが、これらの関係性についてはドイツにおいてもいずれ主題化される必要があるのではないかと考えるに至っている。もっともスティグマをめぐっては、アメリカ憲法学における議論と比較しても、伝統的な意味での基本権侵害に該当すると断言できる場合は必ずしも多くなく、実際には基本権をめぐる社会学的な文脈からの警鐘的なものでしかないという限界も明らかになったが、介入概念の体系化を通じて、基本権理論として取り込むことができるのではないかと現時点では考えている。
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Research Products
(2 results)