2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境税の課税根拠-PPP(汚染者負担の原則)は課税根拠となりうるのか
Project/Area Number |
21730022
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 嘉規 富山大学, 准教授 (70345552)
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Keywords | 公法学 / 租税法 / 環境担税力 |
Research Abstract |
私はこれまで,ドイツの学説で唱えられている「租税国家」における具体的な権利救済のあり様,とりわけ担税力原理の概念を検討し,課税の下限として生じる生存最低限という考え方を,税収目的租税に対する憲法適合性審査ばかりではなく,社会保険料やいわゆる「環境税」等の,税収目的とは違う目的をもつものに対する憲法適合性審査にも生かせないのかという点を,ドイツの判例(決定)・学説の分析から明らかにしようと試みてきた。その分析の中から,課税の正当化根拠としての職業(選択)の自由について取り上げ,嚮導目的(政策目的)の課税といえども,課税できない部分はあるのではないのか,国家が自由に課税物件を選択することができるといっても,許されない部分もあるのではないのかということを研究してきた。本年度は,従来言われてきた担税力原理の概念に,「環境」という新たな価値観を導入することによって,担税力原理の概念がどのように変遷してきたのかを明らかにしようと試みてきた。その中で,まずは日本における議論の到達点をまとめるべく,法律学や財政学における議論を抽出し,論文という形で公表する準備が進んでいる。 それらを踏まえた上で,次年度においては,比較としてドイツの学説で唱えられている「環境担税力(Umweltleistungsfahigkeit)」という概念を取り上げ,ドイツ「租税国家」における具体的な権利救済のあり様,すなわち担税力原理の概念との相違につき検討を加え,それを論文という形で公表することを目指し,本研究に関連するドイツの制度・判例・学説についての資料を収集し,分析・検証を行い,最終的にはPPP(汚染者負担の原則)の妥当性を含めた環境税の正当化根拠を明らかにし,統制の手段として,生存最低限という考え方が有用か否かを探りたいと考えている。
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