2009 Fiscal Year Annual Research Report
共和主義的憲法理論に基づく「民主的司法のディレンマ」問題の探究
Project/Area Number |
21730026
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 Shinshu University, 全学教育機構, 准教授 (90432179)
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Keywords | 憲法学 / 共和主義的憲法理論 / 討議民主主義理論 / 司法権 / 裁判員制度 / 民主的司法のディレンマ |
Research Abstract |
本研究は、大別して、(1) 共和主義的憲法理論ないし討議民主主義理論の精緻化、(2) 裁判所の権限行使の民主的正統性をめぐる議論の整理と展開、(3) 裁判所の司法権行使の民主的正統性の共和主義的憲法理論による基礎づけの可能性の検討の3つから構成される。また、それに加えて、国民の司法参加制度の正統性について、共和主義的憲法理論ないし討議民主主義理論の観点から、理論的に再構成するとともに、その実態を調査し、あるべき理念と実態との整合性についても検討する。 本年度は、関連する文献を網羅的な収集と、その内容の吟味を行った。そのうえで、国民の司法参加制度の意義を共和主義的憲法理論ないし討議民主主義理論の観点から再構成しうるかについて、これまでの研究を総括した。共和主義的憲法観に基づく討議民主主義(deliberative democracy)理論によれば、裁判員制度とは、刑事事件という公共的な事項について、国民(から選任された裁判員)が、(裁判官とともに)徹底して討議(評議)し、決定(評決する公共的討議の場を構築する試みであって、それに参加した国民が公民的徳性(civic virtue)を涵養するための陶冶の企て(formative project)であると述べうるとの結論を得た。そして、その成果をまとめ、単著『裁判員制度の立法学-討議民主主義理論に基づく国民の司法参加の意義の再構成』を刊行した。また、日本法社会学会から招待され、学会報告及び学会誌への論文寄稿を行った。 そのほかに、共和主義的憲法理論研究の中心拠点となりつつあるHarvard大学法科大学院に赴き、アメリカ合衆国の共和主義的憲法理論の最新の議論状況について調査を行った。
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Research Products
(8 results)