2010 Fiscal Year Annual Research Report
行政の法的アカウンタビリティに関する制度のイギリス=オーストラリア・モデルの探究
Project/Area Number |
21730027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深澤 龍一郎 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50362546)
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Keywords | 公法学 |
Research Abstract |
平成22年度は、国内における文献調査を通じて、主として、イギリス=オーストラリアの司法審査における事実問題の取扱いに関する研究を行った。具体的には、イギリスにおける無証拠法則の成立に関する歴史研究、その後のイギリスとオーストラリアのそれぞれにおける無証拠法則の展開に関する研究を行い、イギリスにおいては、特に1998年人権法(Human Rights Act 1998)の制定・施行により裁量審査が積極化した影響を受けて、事実問題の審査も積極化する兆しがあること、さらに、オーストラリアにおいては、1977年行政決定(司法審査)法(Administrative Decisions (Judicial Review) Act 1977)のもとで、事実問題の審査に関する緻密な判例理論が発展していること、等の知見が得られた。とりわけ後者のオーストラリアの判例理論は、わが国において、事実問題の審査の構造や主張・立証責任の配分について分析するに際しても、非常に有益な示唆を与えうるものであるように思われた。 他方で、平成22年度も、諸事情により、海外での聞き取り調査を実施することができなかったこともあり、現実の司法審査における裁判官の事実問題の取扱い(例えば、多くの判決において各裁判官はまず事実(場合によっては裁判官ごとに異なる事実)を述べているが、このことと、事実問題の審査とはどのような関係にあるのか)に関する実証的研究にまでは手が回らなかった。これは次年度に残された課題である。
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