2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730033
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
武市 周作 中央学院大学, 法学部, 准教授 (70389617)
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Keywords | 憲法上の保護請求権 / 保護義務 / 憲法 / 主観的公権 |
Research Abstract |
昨年度から継続して連邦憲法裁判所判例の流れを検討した。昨年度は最初期の判例であるリュート判決までの検討が中心であったため、それ以降を対象とした(そこには原発設置と住民の基本権保護義務という事例も含まれる。3・11以降の原発事故を経験したわが国においては、別の視点からも再検討の余地があることを指摘しておきたい)。また、本研究の主たるテーマは「理論的可能性」ではあるが、わが国におけるこれまで理論・議論に対して保護請求権論が持つ-特に憲法訴訟との関連を中心とした-実践的可能性についても検討した。そもそもの理論的可能性の探究の意義を示すためである。 連邦憲法裁判所は、基本権の客観的内容から保護義務を導出するという論理を現在に至るまで踏襲してきた。連邦憲法裁判所と憲法異議手続が存在するドイツの憲法訴訟制度においてはとりわけ、憲法異議において個人の基本権侵害が要件とされている限りで、保護請求権の導出可能性を論じる実践的な意義がある。これは日本でも異ならない。 むしろわが国においては「保護義務→保護請求権」と考えるよりも、「保護請求権→保護義務」という論理構成の方が馴染みやすいと考えられる。これによって保護請求権を憲法訴訟の訴訟要件的役割に限定することなく、従来の基本権理論に加えて「保護」に着目した主張可能性をもたせることができる。さらに基本権の客観的内容について改めて説かれる機会が増えているわが国において、保護請求権をきっかけとして、客観的内容の意義を更に活かすことができると考えられる。 以上の成果については平成23年度中にまとめ公表する予定である。
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