2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730035
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
榎 透 専修大学, 法学部, 准教授 (90346841)
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Keywords | ステイト・アクション / 民営化 / 憲法の適用 / 憲法上の統制 |
Research Abstract |
平成22年度は、日本の問題状況を念頭に置きながら、民営化・民間委託された従来の公共サービスを行う民間企業に憲法上の統制が及ぶのかどうか、及ぶとしたらどのような理論に基づくものかを検討した。具体的には、以下の(1)(2)の通りである。(1)民営化等の文献を通して、日本の民営化に関わる問題状況を検討した。日本で「民営化」と呼ばれている様々な法的手段、すなわち、法令の制定による民営化、民間委託・PFI、指定管理者制度、構造改革特区、市場化テストを取り上げて、日本の「民営化」は国家の手から離れた完全な民営化と異なり、しばしば公権力の関与が法的に確保されていることを、保育園やいわゆる民営刑務所の例を挙げながら指摘した。(2)民間移転された公共サービスに対する憲法上の統制は、「国家を縛る憲法観」と両立するのか、両立するとすればその条件は何か、ステイト・アクション法理に関する議論から学べることは何か、という点について検討した。まず、国家が「民営化」された公共サービスの枠組みをデザインするという一定の役割を担うことから、「民営化」事業が公私融合的性格を有することを確認した。その上で、(1)民営化が「憲法の拘束からの解放」という側面があることからすれば、私人間効力論を用いて憲法で「民営化」事業(者)を拘束することは、民営化の意味を没却するのに等しい、(2)ステイト・アクション法理からは、国家が最終的に責任を負うべき公共サービスの領域に対して憲法を適用するという考え方を導くことができ、それゆえ「民営化」事業に対する憲法上の統制を模索することも可能ではある。しかし、「民営化」事業における国家の役割に注目すれば、ステイト・アクション法理的発想を用いるまでもなく、国家の活動は憲法の制約を受け、公共サービスを行う民間企業には憲法上の統制が及ばない、と考えられることを指摘した。
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