2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和仁 健太郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (40451851)
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Keywords | 国際公法 / 内戦 / 非国際的武力紛争 / 国際人道法 / 武力紛争法 / 戦争法 / 中立 / 承認 |
Research Abstract |
本研究は、伝統的国際法における交戦団体承認制度の法的性格を明らかにすることを目的とするものである。具体的には、交戦団体承認はどのような場合に行われ(要件)、これが行われた場合には、既存政府の地位、反乱者の地位、第三国の地位がどのように変化したのか(効果)、また、そのような効果がもたらされるのはどのような根拠と論理に基づくものだったのか(交戦団体承認制度の制度趣旨ないし法的構成)を明らかにすることを試みる。平成21年度は、19世紀前半以前の時期についての研究を行い、次のことが明らかになった。すなわち、19世紀前半以前の国家実行(外交文書、国内判決等)や学説に、「交戦団体承認」の概念はまったく見られない。それにも関わらず、内戦における反乱者は一定の場合において既存政府とは別個の戦争当事者と見なされ、戦争法や中立法が適用されていた。反乱者の戦争当事者としての地位は、反乱者が「もはや主権者に従わず、かつ、主権者に抵抗するのに十分な力を備え」るに至ったために、既存政府と反乱者との間の「紐帯」が破壊されたという事実に基づいて認められていた(Vattel)。これに対して、19世紀後半(特に1880年代以降)の国家実行と学説においては、「交戦団体承認」の概念が使われるようになり、かつ、内戦における戦争法や中立法の適用は、「交戦団体承認」がなされていることを前提とするとされるようになった。今後の研究課題は、19世紀後半において、既存政府と反乱者との間の「紐帯」の破壊という構成がとれなくなり、「交戦団体承認」の概念・制度が必要とされるようになった理論的・実際的要請を明らかにすることである。なお、以上の研究成果は、和仁健太郎『伝統的中立制度の法的性格:戦争に巻き込まれない権利とその条件』(東京大学出版会、2010年)に盛り込んだ(特に87-93頁)。
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Research Products
(1 results)