2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和仁 健太郎 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 准教授 (40451851)
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Keywords | 国際公法 / 内戦 / 非国際的武力紛争 / 国際人道法 / 武力紛争法 / 戦争法 / 中立 / 承認 |
Research Abstract |
本研究の目的は、伝統的国際法における交戦団体承認制度の法的性格を明らかにし、それによって、国家や(場合によっては)交戦団体が交戦権を有するのは何故かという、武力紛争法の本質的問題に関する手掛かりを得ることである。交付申請書に記載した研究実施計画の通り、平成22年度は、交戦団体承認制度が成立した時期であると考えられる19世紀後半の時期について、外交文書・国内判決・学説等の調査・検討を行った。なお、調査の結果、この時期については、研究の素材として十分な量の資料が公刊されていることが判明したため、当初予定していた各国公文書館での未公刊資料の調査は見送った。調査・検討の結果明らかになったことを簡単にまとめれば、次の通りである。すなわち、19世紀前半までの時期と異なり、19世紀後半には、「交戦団体承認」という概念が国家実行・学説において頻繁に使われるようになった。しかし、このことは、内戦の規律に関する国際法の枠組みが、それ以前の時期と比べて変化したことを必ずしも意味しない。なぜなら、「交戦団体承認」の概念を使用する判決等の論理を注意深く分析すると、交戦団体の戦争当事者としての地位は、交戦団体承認という行為によって生みだされる(創設的効果)のではなく、交戦団体が既存政府に従うことを拒否し、かつ、既存政府に抵抗するのに十分な力を備えるに至ったために、既存政府との「紐帯」が破壊されたという事実により生みだされ、交戦団体承認はそうした事実を確認する行為である(宣言的効果)、と構成されることが多かったからである。ただし、交戦団体承認行為に創設的効果を認める国家実行がなかった訳ではなく、また、学説上はむしろ創設的効果説をとるものの方が多かったことから、当時の実定国際法の状況については、来年度以降も引き続き慎重に検討する必要がある。
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