2010 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員制度のもとにおける刑法理論の在り方に関する研究
Project/Area Number |
21730059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋爪 隆 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (70251436)
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Keywords | 刑事法 / 刑法 / 裁判員制度 |
Research Abstract |
本年度においては、昨年度の「裁判員制度のもとにおける刑法理論の在り方」に関する基礎理論的・準備的考察を前提としつつ、故意(殺意)の認定、正当防衛の成立要件、責任能力の判断、正犯(共同正犯)と従犯の区別の基準などの刑法解釈の重要問題について、従来の学説・実務について再検討を加え、その「核心部分」を抽出する作業をすすめた。これらの検討作業によって、従来の判例・学説の対立にもかかわらず、一定の「共通理解」が共有されており、それが判例理論の核心をなしていることが確認されたが、同時に、従来の判例においても、必ずしも十分に明確化されていない問題があることも明らかになった。たとえば正当防衛状況において、被侵害者〔防衛行為者〕が現場から退避する必要があるかという問題については、退避義務を否定する理解が一般的であるが、従来の裁判例においては、この問題についての明確な判断が示されているわけではない。また、共同正犯と幇助犯の区別についても、たとえば振り込め詐欺における「出し子」についても共同正犯の成立が認められるなど、一般理論と具体的な結論との間に乖離が認められる場合もある。このような問題について、裁判員裁判においてはどのような取扱いが適切なのか、さらに検討を進める必要があろう。そのほか、本年度は、裁判員裁判における量刑の傾向についても、具体的な裁判例を分析の対象としつつ、検討を加えたが、なお分析対象の件数が十分ではないため、次年度以降も研究を継続する必要がある。
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Research Products
(3 results)