2010 Fiscal Year Annual Research Report
交通事犯への量刑対応からみた刑法の現代的機能の考察
Project/Area Number |
21730060
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
星 周一郎 首都大学東京, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10295462)
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Keywords | 量刑論 / アメリカ刑法 / 量刑ガイドライン / 危険運転致死傷罪 |
Research Abstract |
平成22年度は、前年度に引き続き、アメリカにおける量刑理論の分析を行い、いわゆる医療モデルの失敗から公正モデルへの移行というアメリカの刑罰論の趨勢における、量刑ガイドラインの有する基本的意義を明らかにした。 さらに、アメリカにおける交通事犯に対する刑事実体法の対応の変遷について分析を行った。それにより、交通死傷事故に対して、一方では、処罰の確実性を確保するために「交通致死罪」という通常の殺人罪より軽い犯罪類型が設けられつつも、他方で、悪質交通事犯に対しては、極端な無謀に基づく謀殺罪(「第2級謀殺」(second degree murder))の適用をも辞さないというアメリカにおける実態を明らかにすることができた。これは、従来、業務上過失致死傷のみで交通事犯に対応してきたわが国のあり方と比較した場合、重要な示唆を与えるものであると考える。 以上の比較法的考察と並行して、わが国における危険運転致死傷罪の意義について、若干の解釈論を通して、検討を行った。具体的には、危険運転致死傷罪が、交通事犯を過失犯としてのみ論ずるわが国刑法のあり方の不十分さを踏まえ、「結果的加重犯の一種」とされる危険運転致死傷罪について、純粋な故意犯ではないが、なお過失犯として堤えることが不十分という、いわば中間領域にあたる行為を適切に処罰するための犯罪類型として積極的な意義が与えられるべきで、そのような観点から、各構成要件要素についての解釈がなされるべきであることを明らかにした。 そして、以上の検討を踏まえて、わが国における交通事犯に対する対応の意義および問題点に関して、危険運転致死傷罪の適正な解釈のあり方を中心として、適切な量刑対応を行うべきことを研究結果として提言している。
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Research Products
(1 results)