2011 Fiscal Year Annual Research Report
詐欺罪をめぐる「処罰の早期化」に関する考察―詐欺罪の成立範囲の明確化に向けて―
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21730061
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
足立 友子 成城大学, 法学部, 講師 (70452555)
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Keywords | 刑事法学 / 詐欺罪 / 財産犯 |
Research Abstract |
本研究は、日本とドイツの詐欺罪関連規定とそれらをめぐる現状を検討し、多様化の一途をたどる詐欺的行為に対して詐欺罪規定がどのように適用されるべきかを明らかにすることを目的としている。 完成年度にあたる本年度は、(1)ドイツにおける詐欺罪関連規定のあり方、(2)詐欺罪規定の歴史的沿革と現在の罪質との関連性、並びに(3)近時の日本における詐欺罪の成立範囲とその限定のしかた、の3点に重点をおき検討を行なった。 (3)に関しては近時、詐欺罪の成立範囲が拡大傾向にあるのではないかとの指摘があり、取引関係の中で「本人確認」が重視される場面での詐欺罪の成否判断が示された最近の最高裁決定もそのきっかけの一つとなった。そこで、歴史的に見て「欺罔犯罪」と「財産犯罪」の二つの沿革を持つ詐欺罪規定では、財産的処分の意思決定に対する侵害を詐欺罪の成否判断においてどのように考慮するべきか、また「財産侵害」の実質としていかなる内容を要求すべきかを明らかにするため、従来の解釈論における「財産的損害」概念ならびに保護法益としての「財産」概念を再検討した。 この検討に当たっては、ドイツにおける詐欺罪の「財産的損害」概念及び特別構成要件をめぐる議論が非常に示唆的であった。ドイツでは、詐欺罪の基本構成要件に日本よりも厳密に財産的「損失」の発生を要求する要素を含む一方で、特定の場面に限定して損害の発生を待たずに既遂となる抽象的危険犯の構造を持つ特別構成要件を設けている。ここからは、金銭的評価に頼った「損害」概念だけで詐欺罪の成立範囲を適切に限定づけることの難しさが窺える。 そして、かような制約のない日本においては、自らの財産をどのように用いるかについての「財産的処分の自由」の観点をより重視することが可能であり、かつ望ましいと考えられる。この観点についてのさらなる明確化を今後の課題とし、継続的に取り組んでいきたい。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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